3月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領のオンライン演説が、現地と日本をオンラインでつなぐ形で午後6時から行われました。国会でのオンライン演説は史上初めてです。その中で、ゼレンスキー大統領は「日本はアジアのリーダーになった」「日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると思う」と述べました。また、演説の中では「チェルノブイリ原発」や「サリンなどの化学兵器」にも触れました。今回の演説で何を伝えたかったのか、専門家に聞きました。
■ゼレンスキー大統領国会演説で語ったことは
渡部峻キャスター:
ゼレンスキー大統領が23日夕方、オンラインで国会演説を行いました。その中で出た発言を一部まとめました。まず最初に大統領は日本への感謝を述べました。「日本がすぐに援助の手を差し伸べてくれた。心から感謝している。▼反戦運動▼自由▼平和への望み日本はアジアのリーダーになった」このような言葉で始まりました。
また、日本に寄せたという演説もありました。「チェルノブイリ原発が支配された。事故があった原発を想像してみてください。ヨーロッパ最大のザポロジエ原発が攻撃を受けている」「サリンなどの化学兵器を使った攻撃をロシアが準備していると報告を受けている」「核兵器が使用された場合世界の反応はどうなるか。今世界中の話題になっている」「ウクライナに対する侵略の津波を止めるためロシアとの貿易を禁止し各企業が市場から撤退しなければならない」と話していました。
そして「アジアで初めてロシアに対する圧力をかけたのが日本です。引き続きその維持をお願いします」と改めて感謝を述べ、さらには「既存の国際機関が機能できていないので新しい予防的なツールを作らなければならない。日本のリーダーシップが大きな役割を果たせると思う」というふうに話しました。
■「原発」「サリン」「核」日本の共感誘う内容
ホラン千秋キャスター:
これまで各国で行ってきた演説の中では過去の具体的な歴史に触れたりすることが多かったと思うんですが、日本における演説の中では具体的な出来事には触れませんでしたが、私達が今ちょうど直面している復興の問題であったり、原発の問題であったり危機的な状況にたどり着いた経緯は違いますが、私達もウクライナの皆さんも共感できるような内容もありましたね。
明海大学 小谷哲男 教授:
日本が直面した福島の原発問題や広島の原爆被害などに直接は言及しませんでしたが、同じような目に遭ってるんだということで日本の共感を得ようとしたということは言えると思いますし、日本のこれまでの復興の努力がウクライナにも役立つだろうというメッセージが込められていたと思います。
■日本政府今後の対応は
ホランキャスター:
演説を受けて、今後日本はどのような方向に進んで行くという印象を受けましたか?
小谷教授:
引き続きロシアへの制裁やウクライナへの支援というのは当然行っていくと思いますが、やはり今回出てきた日本のソフトパワー(価値観や文化で相手へ影響を与えること)に対する期待に応えるということが必要になってくると思います。戦後の復興や国際機関の改革、ここに日本に対する期待というのが非常にあったのではないかと思います。
■高まる化学兵器使用の危険性
井上貴博キャスター:
小谷教授も以前から注目していた化学兵器というのが一つレッドラインになる。プーチン大統領が焦っているのでそれに手を出すのではないか。一方でゼレンスキー大統領としての焦り、そのポイントについて何か演説から感じることはありましたか。
小谷教授:
化学兵器やサリンという言葉への言及もありましたので、今ウクライナに対して化学兵器が使われる危険性を非常に感じているというふうに思います。とりわけ一般市民の犠牲がさらに増える、そういう懸念があるんだと思います。それゆえに、ロシアに対するさらなる圧力をかけてほしいというメッセージが込められていたのではないでしょうか。
井上キャスター:
難しいのはプーチン大統領を孤立させたいけれども孤立させすぎてしまうと自暴自棄になって手を出すかもしれない。このバランスはどうご覧になってますか。
小谷教授:
今のところやはり我々側の抑止が効いていないということは残念ながら認めなければならないと思います。一段一段とロシアがエスカレーションをしていく中で、我々側もきちんとした必要な対処をしなければならないということだと思います。その中には軍事的な対応も含めて必要になってくると思います。化学兵器・生物兵器が使われれば、やはり軍事的な懲罰をアメリカやNATOが与えるということも必要でしょうし、日本がそれに直接関与することはありませんが、そうなった場合に日本としてもNATOやアメリカの取り組みを支援する、支持する。そういうことが必要になってくるのではないでしょうか。
■核兵器使用のシナリオ
渡部キャスター:
どんな状況になったらロシアは核兵器を使うのか。ロシアのペスコフ大統領報道官はアメリカのCNNのインタビューに答え、「ロシアが国家存亡の脅威にさらされれば、核兵器の使用というのはあり得る」と話しています。
ホランキャスター:
国家存亡の脅威というのは、具体的にどのような事でしょうか?
小谷教授:
ロシア本国自体が米国やNATOから核兵器を含めた本格的な攻撃を受けるということだと思います。この発言自体は実はロシアの基本的な立場であるんですが、ロシアとしてはより小型の核兵器を局地的に使うということは排除していませんので、この言葉に惑わされてはいけないと思います。今後もウクライナで戦況が打開できないときに化学兵器や生物兵器そして小型の核兵器を使う可能性は十分考えておかなければならないと思います。
■国際社会の総意と結束
井上キャスター:
国際社会ができることについてですが、プーチン大統領の心一つで、いくら話し合ってもなかなか動かないということが続いてますが、24日にはベルギーでNATO首脳会議とG7首脳会議。そして25日には米国のバイデン大統領とポーランドのドュダ大統領の首脳会談という予定が組まれています。どんなことを期待してますか。
小谷教授:
一つはやはり制裁のさらなる強化が発表されるということですので、日本としてもそれに歩調を合わせていかなければならないと思います。またウクライナに対する軍事支援も引き続き行っていくでしょうし、化学兵器や核兵器などが使われた場合の我々の対処というものも事前調整しておく必要があるだろうと思います。
井上キャスター:
より踏み込んだ制裁というのはどんなものが考えられますか。
小谷教授:
一つはやはり二次的制裁で、ロシア企業と取引を行っている企業に制裁を課すことができるということが考えられると思います。
(23日18:45)
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