子どもが家族をケアをするヤングケアラー「苦しみ他人にわかってもらえるだろうか」孤独感を救う道は (21/09/09 15:44)

知的障害のある兄のケアを子どものころにしていた男性。同じような境遇の子どもたちを支援するボランティア活動を続けています。ヤングケアラーと呼ばれる子どもたち。彼らが抱える心の悩みに迫ります。

「いい子でいなきゃ」障害のある兄弟姉妹に気を遣い自分の気持ちを押し込める子ども達

 名古屋市内でボウリングを楽しむ子どもたち。この子たちにはある共通点があります。それは兄弟や姉妹に障害があることです。

 普段の生活では障害のある兄弟や姉妹に気を遣って自分の気持ちを押し込んでしまうことがあります。

「来る時は神妙な顔で来て、保護者がいなくなったらすごく元気になる」(ボランティアの諏方智広さん)

 同じ境遇の子どもたちと一緒に遊ぶことで日頃のストレスが軽くなります。

「親の前では、我慢というか『いい子でいなきゃ』という気持ちがあると思う。ここでは『いい子じゃなきゃいけないよ』とは伝えていない。『ここでは思いっきり、やれる範囲で好きなことやっていいよ』と、そういう場です」(ボランティアの諏方智広さん)

ボランティアの男性もヤングケアラー経験者 兄のケアしながら感じた孤独感

 一緒に遊ぶボランティア。彼らにも障害のある兄弟や姉妹がいます。

 戸谷和弘さん(36)。7歳上の兄は重度の知的障害と自閉症の傾向があります。

「兄は子どものころ家の中のものを荒らしてしまって、自分のおもちゃになるものを探してしまうというところがありました。兄が家の中を荒らさないように、自分がしっかり見ていて止めるのが一つの役割。それはずっと続いていました」

「学用品だとかおもちゃを壊されてしまうようなことはずっとあって、ただそれを我慢するしかない状況が続いていた」(戸谷和弘さん)

 戸谷さんが7歳のころ、父親が亡くなり、母親とともに兄の面倒をみる生活が始まりました。

「苦しみとか苦労っていうのが、他の人にわかってもらえるのだろうかとずっと漠然と思うところで」(戸谷和弘さん)

 兄が施設に入るまでの約6年間、戸谷さんは孤独な気持ちでケアを続けました。

中学生の17人に1人がヤングケアラーの実態

 障害や高齢の家族の面倒をみている子どもたち。介護や家事をせざるを得ない環境にある子どもたちは「ヤングケアラー」と呼ばれています。

「話を聞いてくれる人がいなくて、『自分が至らないからこそ苦しい思いをしてしまっているのかな、自分になにか原因があるのかな』というふうに自分を責めることがあって、そういう疑問や葛藤から孤独感・孤立感が深まっていったと思います」(戸谷和弘さん)

 国が今年4月公表したヤングケアラーの実態調査では、「世話をしている家族がいる」と答えた中学生は5.7%。およそ17人に1人にあたります。

 ヤングケアラーは決してまれな存在ではないことが明らかになりました。国はヤングケアラーの支援に向けて動き出しています。

「家族への気遣い」「我慢すること」もケアではないか

 ただ、戸谷さんは国が示すヤングケアラーの「定義」について疑問をもっています。

「ケアしている・していないで支援の対象になるかならないという線引きは危険かなというふうに考えています」(戸谷和弘さん)

 国がヤングケアラーと定義し支援の対象にしているのは、介護や家事といった直接的なケアをしている子どもたちです。

 しかし戸谷さんは、たとえ直接的なケアをしていなくても、家族のために気持ちを押し込めたり、我慢したりすることも立派なケアだといいます。

「物理的な介護や世話をしているだけではなくて、家族への気遣いといった負担も大きなケアなのかという風に考えています」(戸谷和弘さん)

 子どもたちの孤独感に寄り添う仕組みづくりが大事だと訴えます。

「一人じゃない」そう思える場所が孤独感から救い上げる

 戸谷さんは月に一回ほど、同じ境遇の仲間たちと集まります。

「大学受験のときも邪魔はされるし、ただただイライラしていてそのイライラをぶつけることもできずに自分で抱えて…」(参加者)

 他人に言いづらいことを打ち明けられるのは、同じ悩みを抱えているから…「一人じゃない」、そう思える場所の存在が孤独感から救い上げます。

「ヤングケアラーの悩みは多種多様で、ケアをしていること以外にも多くの課題を抱えている。きちんとヒアリングを通して、その人がどのような生活をしているのか、実態を明らかにしたうえで判断するべきだと思っています」(戸谷和弘さん)

(9月9日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

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