家族の介護や世話をする「ヤングケアラー」と言われる子どもたち。状況を周囲に話せず孤立する中、求められている支援とは…。
札幌市の高校生、凌大君(18)。
精神疾患のある母親と暮らしています。
家は母子家庭で、姉の瑠南さん(21)や兄と協力して、家事や母親のケアを担ってきました。
瑠南さん:「基本的なのは洗濯や掃除。母親の調子が悪い時には、病院に付き添ったりとか」
家族の介護や世話をする18歳未満の子ども、ヤングケアラー。
大きな課題が「孤立」です。
凌大君:「話せない。うつ、自殺という単語を出さなきゃいけなくなるので、やっぱり話しちゃダメなんだと思っていたので…」
子どもたちの小さなSOS。どうしたら受け止めることができるでしょうか。
元ヤングケアラーの瑠南(るな)さん。
精神疾患のある母親に代わりに家事をするようになったのは小学生の時でした。
瑠南さん:「私が小学2年生のころから、うつの症状とかもひどくなり、最初のころは薬の治療もなかなか合わず、自傷行為をしたり入院したりということが結構ありました」
母子家庭ですが、母親は状態が悪い時は起きることができませんでした。
瑠南さんが2人の弟と家事を担当しました。
瑠南さん:「洗濯、掃除。調理、ごみ捨て。それにプラスで母親が調子が悪い時は病院に付き添ったりとか、自傷行為をしそうなときには危ないものを隠したりしていました」
ヤングケアラーが担当するのは、買い物や料理などの家事のほか、入浴やトイレの世話などの介護です。
4月に公表された国の実態調査では、中学生は17人に1人、クラスに2人の割合でいることが分かりました。
ケアをする時間は1日平均4時間ほどですが、7時間以上という生徒も1割ほどいました。
瑠南さんは病院に付き添い、そのまま学校に行くこともあったといいます。
瑠南さん:「自傷行為をするのは夜中が多いので、病院に連れて行き、自宅に帰るのは朝方ということが多いので。その状態で学校に行かないといけない」
瑠南さんの母親は取材に「情けない、子どもたちに申し訳ない」と語りました。
国の調査では、ヤングケアラーが孤立していることも明らかになりました。
「ヤングケアラーであることを相談した経験がない」という生徒が、中高生ともに6割を超えました。
瑠南さんの弟、凌大君も学校の先生や友だちに相談することはありませんでした。
凌大君:「基本的にそのことを話そうとなると、うつや自殺という単語を出さなければいけなくなる。話してはいけないんだなと思っていたので、ほとんど話したことはない」
そんなきょうだいが社会とつながるきっかけになったのが、ある場所との出会いでした。
4年前の凌大くん。札幌市内でNPO法人カコタムが開く、経済的に厳しい家庭への学習支援に参加していました。
瑠南さんは勉強だけでなく、様々な体験をさせてくれるカコタムに参加し、スタッフにヤングケアラーであることを語ることができるようになりました。
瑠南さん:「今まで話してこなかった家の事情を、信頼できる大人に話せた。言葉にするだけでストレス解消というか、自分の心の中でためていたものが少し軽くなった気がして」
瑠南さんは大学に進学。
勉強のかたわらカコタムのスタッフとして、子どもたちの学習支援も行っています。
そして弟の凌大くん。調理師になるため専門学校への進学を希望しています。
ラーメン店でアルバイトし、進学費用を貯めています。
凌大君:「入学金や一人暮らし用の資金は貯めないといけないことは、お姉ちゃんを見ていて分かった。バイトはずっとしようと思ってたんで」
日本ケアラー連盟の理事、中村健治さん。
子どもだけでなく、世帯全体への支援が必要だと訴えます。
日本ケアラー連盟 中村 健治 理事:「ヤングケアラーの側に立つだけでなく、ケアラーを必要としている人の側にも立ち、そういう面では個人を見ながらも、その世帯全体をみられるような仕組みづくりに取り組んでいくのが一番望ましいのかなと」
精神疾患のある母親と暮らす凌大くん。
勉強とアルバイト、そして家事。
忙しい中で安らぐことができるのが、カコタムが作った中高生のための居場所、「ゆるきち」です。
空いた時間はここで勉強したり遊んだりして過ごします。
専門学校に進学後は、スタッフとして子どもたちに関わりたいと考えています。
凌大君:「家以外の居場所としてあったわけで、逃げ場としてもあったし、カコタムの人たちがいたおかげで、今普通に勉強もできているし、居場所もできている。その恩を返し、自分みたいな人が居場所を求めた時に、居場所を作れるようにするために、メンバーになろうかな」
孤立するヤングケラー。周囲とつながり、安心して過ごせる場所が求められています。
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