共依存関係について解説します【精神科医・益田裕介/早稲田メンタルクリニック】

早稲田メンタルクリニック院長として働く、現役精神科医益田裕介があなたの疑問に答えます!

母娘の共依存問題。離れて暮らす母親との距離感について。

母がコロナ不安+孤独+子との境界が曖昧+睡眠障害+自律神経失調症で、長文のネガティブラインを送ってきます。

友人と思える人が子どもくらいしかおらず、たいへんかわいそうな人です。

しばらく無視をすることでうまくいく(音沙汰はなく、向こうで孤独を募らせている)のですが、たまに私もかわいそうになり、世間話をしようとします。

すると、脈絡なく、つらいことが津波のように書かれた感情的なラインを受け取ってしまいます。

母親と接触するとたいへんに疲れ、私もつらい気持ちになってしまいます。

なお、医療、カウンセラー、その他ほぼすべての人間や制度を信用していないこと、田舎で医療資源にあまりアクセスできないこと、それにより相性の悪い医者に当たって傷ついたこと、自分の症状を伝えるのが苦手なこと、プライドが高いことにより、心療内科への通院はしてくれず、耳鼻科で出される睡眠薬や風邪薬をOD(軽く)するそうです。

少しの接触でもやはり疲れました。

このままいくと私に介護の義務が回ってくるので、何かしら改善させたいのですが… 私が小学生の頃からこんな感じです。

仕事はしていますが貯金はありません。

私の方は親にそんな相談?愚痴?を言ったことないのに、不公平な感じがします。

#母子密着について

母娘は、距離が近づきすぎ、相手を自分の一部分だと思っていることが多いようです。

成人した子供は親から離れていくものですが、ふたりともそんなことを認めたくないかのようにふるまいます。

お互いが別の人格を持ち、別の価値観を抱き、別の人生を歩んでいることが認めがたいようです。

そういう状態を母子密着が強い、などと呼んだりします。

精神科臨床ではよく見られる光景です

#母

あくまであなたの文面からだけですが、お母さん自身も、自立した人間とは言い難いようですね。

医師やカウンセラー、それらの家族以外の人を信じられず、プライドが邪魔をして、対等な人間関係を維持するのが困難なようです。

なので、自分の言いなりにしやすい我が子だけと人間関係を完結させたいようです

しかし、そういう風にしか振舞えない、彼女の能力的?な弱さもあるわけで、なので、あなたも同情しているようです。

#あなた

一方で、あなたも母を同情するという構造で、母を支配し、自分から離れさせないように仕向けているとも見えます。子供は親を支配したいという無意識的な欲望を持つので、それも仕方がありません。

なので、あなたが言うように「共依存関係」なのだと思います。

(こういう言い方は精神分析的なので、なじみのない人には失礼に感じられたり、暴力的に感じられるかもしれません)

#犠牲を払う関係

本来、成人した親子は互いに別の場所で別の人生を歩まなくてはなりません。それが自立です。自立は、人生の悲しみでもあり、喜びでもあります。

その生みの悲しみを拒否すると、このような歪な関係が生まれてしまうのですが、この関係を維持するためには、それなりのコストを支払わなければなりません。そのコストが共依存関係でうまれる、あなたの辛さであり、母の成長機会の損失です。

あなたは独立しようとしますが、振り返ると、また元の場所に引き込まれてしまうようです。

母親は子供の自立に耐えられるはずだ、と期待したいですが、彼女には難しいのかもしれません。

#決断の難しさ

しかし、あなたの人生はあなたのものでもあります。

無理をしながら母と付き合っていくか、母を傷つけることになるかもしれないがあなたの人生を進むべきか、選択をしないといけません。

母ばかり甘えて不公平だ、私が決めなくてはいけないのは不公平だ、と感じるかもしれません。

が、母とあなたの社会的能力の不公平や、母はあなたなしでは生きられない?が、あなたには選択できる自由があるので、どちらの立場がよいか、本当の意味での不公平は分かりません。

案外、母もしたたかで、あなた以外にも楽しみを見つけているかもしれません

(臨床的には、子供が過度に同情しているパターンが多い。

 だいたい、大人はしたたかです)
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