激しい攻勢の一方で伝えられているのが、ロシア軍の混乱です。通信傍受などの諜報活動を行うイギリスの情報機関は「士気の下がったロシア兵が、誤って自軍機を撃墜する始末」と語っています。一体、ロシア軍に何が起きているのでしょうか。
▽「どうやって戦えば」「撤退するかも」
(ウクライナ兵士)「私たちはウクライナから来ました」
女性「神様 ありがとうございます」
涙ながらに感謝の言葉を伝える女性。現地メディアによると、ここはウクライナ軍が奪還した北部・チェルニヒウの村とされる映像です。
各地で反転攻勢に出ているウクライナ軍。国防次官は2日、キーウ州全域をロシア軍から奪還したと発表しました。
(ロシア兵)「実際どうやって戦えばいいか分からないんだ。武器もすべてなくなった。もしかしたら撤退するかもしれない」
これは、ウクライナ保安庁が2日に公開した音声です。首都キーウ近郊のロシア兵の通信を傍受したといいます。
「この1カ月俺たちはここで何の役にも立たない戦いをしてきたんだ。プーチンはクソ野郎だ」
ロシア軍が撤退したというチョルノービリ原発。
ウクライナの原子力発電公社によれば「最も汚染された区域でロシア人が塹壕を掘った」ことを確認。
「かなりの量の放射線を浴び、病気の兆候が出てパニックに陥った」といいます。
原発近くにいたロシア兵と本国にいる女性の会話とされる音声でも・・・
「あなたの甲状腺の持病が心配だわ、原発の近くにいたし」
「本当にやばいよね」
「彼(知人の兵士)も検査を受けたら中度の被ばくと診断されたそうよ。帰ったらとりあえずワイン飲みましょう」
「実はここにいる間に飲んだウォッカの量は、過去10年で飲んだ量を超えたよ」
▽「命令拒否」「自軍機撃墜」ロシア兵に何が
ウクライナ軍が奪還した北東部の街。住民が久しぶりに自宅に戻ってみると・・・
(自宅に戻った住民)「ロシア軍は家の中を全部荒らしてタブレットやネックレスなどを盗んでしまった」
ウクライナ保安庁が傍受した音声には略奪行為を自慢げに話すロシア兵も・・・
(ロシア兵)「君のために化粧品を盗んだよ。他には女性ものの靴でブランド品、サイズは38、どの洋服も高品質だよ。ほかの兵士もみんなブランド品を入れたかばんを引きづっていたよ」
通信傍受や暗号解読などを行うイギリスの情報機関、政府通信本部(GCHQ)は次のような分析を明かしています。
(英政府通信本部GCHQ フレミング長官)
「ロシア軍兵士は武器も足りず、士気も下がった状態で作戦命令に従うことを拒否している。そして自軍の武器をわざと破壊したり、不意に自軍の航空機を撃墜したりしています」
アメリカの外交専門誌「フォーリン・ポリシー」は「ロシア軍は機密の通信手段が何らかの理由で本来あるべき機能を果たしていない」
「暗号化されていない周波数でのやりとりのため、アマチュア無線家など誰でもロシア軍の通信を簡単に傍受できるようになっている」
という外交安保関係者らの証言を伝えています。
(ゼレンスキー大統領)「傍受している電話の音声からあなたたちが生き残りたいことを知っている。私たちの軍隊に降伏するならあなた方に生き残るチャンスを与える」
ウクライナの内務大臣顧問が公開したのは、戦車に乗って投降し、1万ドルの報酬が約束されたというロシア兵の写真です。
携帯電話番号を特定したロシア兵1人1人に投降を促すメッセージを送っているのだといいます。
▽ロ軍“苦戦”の理由は「古い軍事戦術」か
旧ソ連の構成国だったアゼルバイジャンで軍の副司令官だったルスタムザデ氏。ロシア軍の内情をこう分析しています。
(アゼルバイジャン軍の元副司令官 アギーリ・ルスタムザデ氏)
「彼らの士気は非常に低いです。軍事に精通している人間は、軍が攻撃している映像を見ただけで士気がわかります。多くの兵士は演習に行くと思っていたのに、目を開けたら戦場にいた。なんのために戦うのか、なんのために死ぬのか兵士は知っていなければ士気はあがりません」
こうした前線の状況をプーチン大統領はどこまで把握しているのでしょうか?
アメリカ政府高官はプーチン大統領を周囲が怖がり誤った戦況が伝えられているとみています。
(米ホワイトハウス べディングフィールド広報部長)「軍の成果が上がらないことなど、誤った情報を受けていたと思います。上級顧問たちが恐れて真実を伝えられていない」
しかし、ロシア軍の内情に詳しいルスタムザデ氏は・・・
(ルスタムザデ氏)「プーチンが知らないはずはありません。ロシアには、対外情報庁(SVR)、連邦保安局(FSB)、国防省からの報告もあります。最低でも3つの情報源から毎日情報が入ります。戦争という状況下で大統領がだまされるなどということはありません。プーチンはそこまで愚かではないと思います。それは(アメリカの)政治的な意図をもった発表です」
プーチン大統領には随時正確な情報が伝わっているといい、これはアメリカによる“揺さぶり”だと話します。
「圧倒的な戦力差」と言われていたにも関わらず、苦戦が伝えられるロシア軍。
ソ連軍やロシア軍の戦い方や戦術を学んできたルスタムザデ氏はロシア軍の「弱さ」の理由をこう指摘します。
(ルスタムザデ氏)「これまでずっとロシア軍の戦術や技術を見てきた人間として、私の意見は(ロシア軍に)否定的です。1939年に新しい「軍事戦術(戦闘ドクトリン)」が作られました。後に、高精度の兵器が現れまた新しい「軍事戦術」が現れました。しかし、ロシアがいまだに、過去の戦術で戦っているのを私たちは目の当たりにしています。大量の戦車と歩兵部隊による戦術です。21世紀にそのような戦い方は誰もしていません」
戦車部隊を中心に一気に敵陣を占領するという、古い「軍事戦術」をとっているというロシア軍。兵器を近代化していても、「戦術」が第二次世界大戦時と変わっていないため、ウクライナ軍に押されていると指摘します。
▽「戦況悪化で軍事クーデターの可能性」
さらにその近代化された兵器も、“精度はかなり低い”と分析しています。
(ルスタムザデ氏)
「私はロシアが発射したミサイルの数と、ウクライナに命中したミサイルの数を比較しています。約30%から40%のミサイルが目標に到達しませんでした。10m~20mの誤差があり、精度がいいとはいえません。」
このような戦況の悪化からプーチン大統領と軍には今、亀裂が入り始めているといいます。
(ルスタムザデ氏)「例えば、軍の高官が解任されたり、戦車部隊の司令官が戦死したりしています。現段階ではロシア軍は負けているといえます。いまロシア軍は南東部のドンバスで大きな戦いを行うため戦力を集めています。もし軍が成果を出せなければ(プーチン大統領と軍の)関係はさらに悪化すると思います。もしロシアがドンバス地方で負けて、状況が悪化した場合は、軍事クーデターなど何かが起こる可能性があります。」
▽「ウクライナが勝つ」要因は“団結力”
ドンバス地方では、戦闘がさらに激化する可能性もあると指摘するルスタムザデ氏。ロシア軍による侵攻は、どのような決着を見せるのでしょうか?
(ルスタムザデ氏)「ウクライナが勝利するでしょう。その要因の一つは、ウクライナの団結です。国民を負かすのは非常に難しいことです。軍だけが戦っているのではなく、ウクライナでは今、全国民が戦っているのです」
4月3日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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