ロシアが日本を“非友好国”に指定「ロシアは必要ならどんなことでもやる」【後藤部長のリアルポリティクス】(2022年3月8日)

ロシア政府はウクライナに対する軍事行動を受け、制裁に踏み切った国や地域を「非友好国」に指定し、リストを公表しました。アメリカ、EU=ヨーロッパ連合のほか日本も含まれています。今後、日本政府はロシアとどう向き合うべきなのかなど、TBS報道局の後藤俊広 政治部長に話を聞きます。(聞き手:渡部峻キャスター)

--ロシアのウクライナへの軍事侵攻から、まもなく2週間を迎えようとしています。今回はロシアが日本に対して強い対応を示している点について後藤部長に伺います。

3月8日の一番の関心事は、ロシアが日本などを“非友好国”に指定したことです。これは日本だけでなくアメリカやEU諸国などが対象となっています。経済制裁をとっている国や地域を非友好国と認定した。これも一つの“威嚇”といいますか、強いけん制になるんじゃないかと思います。こういった措置はある程度予想されたことですが、今後さらに関係悪化は避けられないと思います。

--実際に日本企業もロシアから撤退する動きが出ています。トヨタ自動車がロシアに駐在する従業員に帰国を指示。日産自動車がロシアのサンクトペテルブルグにある工場を近日中に稼働停止すると発表しています。

自動車産業は日本の基幹産業です。自動車なども世界で販売することから色々なところで生産手段がありますが、その一翼を担う工場を止めざるを得ないということは日本企業だけでなく日本経済全体にもダメージが大きいと思います。いよいよ戦争の影響が日本にも忍び寄ってきたと思います。
そしてもう一つ我々メディアが気になるのは、ロシアで成立した一つの法律です。ロシア軍に関する偽情報いわゆる“フェイクニュース”を流したメディアに対しては、最大で禁固15年の処罰が課せられるという法律です。こういった動きを踏まえて海外メディアの一部はロシア国内での取材から撤退するということも出てきています。
日本政府側も問題視しています。松野官房長官は昨日の会見で「報道の自由を制約する法律が成立したことまたそれを受け外国メディアがロシアでの活動を停止せざるを得ない状況となっていることを強く懸念をしておりロシア政府や政府系メディア等がウクライナに対する軍事侵略を支援するために、偽情報を広範に使用していることを非難する」とコメントを発表している。最大限の日本政府の抗議の意思もあると思う。
政権幹部の一人はロシアの動きについて「法律が無茶苦茶なのはわかっているけどロシアでは国会を通って合法なんだから。どういうことになるかはまったくわからない」つまり今の段階ではこの法律がどういう形で適用されるのか予断を持てない。日本政府としても予測できないんだということを正直に明かしている。

--これまでもフェイクニュースを処罰する。こうした法律はあったのか?

戦争というのは情報戦の部分が強い。相手国に対して軍の動きがどうなっているかを赤裸々に明かされることは好ましいことではないですから情報統制は戦争のつきものです。しかし今回ポイントなのは、対象となる地域は戦場となっているウクライナではなく、「ロシア国内」での報道活動です。そういった意味ではこれまでの戦時下における情報統制とは若干違ってくるのではないかなと感じます。

--ロシアメディアの報道を見るときに気を付けなければならないことは?

ロシア側のメディアは一定程度、政府側の思惑が反映された情報が流れることになると思います。今回なぜこういった「最大禁固15年」という厳しい措置をとったのか。ロシア側としてもかなり危機感を持っているからこのような措置をとったんだと思う。
いまの軍事侵攻はプーチン大統領が想定していた順調な進み具合ではないと思います。経済制裁、国際社会や各企業が撤退している。そうした動きも当初の想定以上の速さで進んでいると思います。
ロシア国内では経済が厳しくなってきていて、ルーブルが暴落し、物価も高騰しています。こうしたニュースによって、国内の不安を掻き立てられることへの極度の警戒感がこのような厳しい立法措置につながったんじゃないかと思います。

--ロシア側の焦りもあるのではということだが、停戦合意には至らなかった。長引くことになるのか?

長期化は必至とみられているし、今のロシア側の状況は日本政府も読めないとみている。ロシアは戦時体制です。
政府関係者の1人は、いまのロシアについて「国際社会がどうとかそういう判断じゃないから、必要だと思ったらどんなことでもやる」とみています。
いまのロシアは、平時の時のロシアではない。“平時の外交のロジックは通用しないだろう”と、日本政府も認識している。例えて言えば今のロシアは“手負いの獅子”。日本側も戦時体制のロシアと向き合い、外交交渉、経済的な部分でのプレッシャーに立ち向かっていく。また戦時法制ともいえるような偽情報に対しての処罰、こうしたものに対してもシビアに向き合っていく、そういった厳しいフェーズにまで突入してきたんだなと痛感しています。

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