ロシアのラブロフ外相は「ウクライナの中立化をめぐり、NATOの東方拡大について現在の停戦協議で話し合われている。いくつかの具体的な文言記述について合意が近いとみている」と明らかにしました。ウクライナのゼレンスキー大統領も「NATO加盟が難しいことは分かっている」発言しています。
◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ウクライナがNATOに加盟しない点について合意が近付いているとみていいですか)
兵頭慎治さん:「ウクライナ側もNATOの加盟問題については、交渉の余地があるという態度を示してきました。両者の争点の一つであるウクライナの中立化に関しては歩み寄りがみられていて、何らかの具体的な文言を記述するような合意文書ができる可能性が出てきました。ただ、争点はこれだけではありません。ウクライナ軍の非武装化や、併合したクリミアの主権、ロシア軍の撤退など、それ以外の点では根本的な対立が続いているので、これで停戦とはいかないと思います」
ロシアが要求する『非武装化』をめぐり、停戦協議にあたっているロシア代表団のトップ、メジンスキー大統領補佐官は「オーストリアやスウェーデンのような『非武装国家』にする案をウクライナ側が提案してきた」とする一方、ウクライナの代表団、ポドリャク大統領府顧問は「ウクライナはロシアと戦争状態にある。したがって、ウクライナだけのモデルがなければいけない。このモデルは法的に裏付けられた安全保障があって初めて成立するもの」としています。
(Q.食い違いもあるようですが、どう見たらいいですか)
兵頭慎治さん:「オーストリアやスウェーデンは非武装国家と言っても、自前の軍隊を持っています。ウクライナは、軍を持ったうえで中立、NATOに入らないことをイメージしているんだと思います。ただ、法的に裏付けられた安全保障がなければ、ウクライナとしては受け入れられないと。1994年に、ウクライナがソ連から引き継いだ核を放棄する代わりに、アメリカやイギリス、ロシアは安全を保障するというブタペスト覚書というものがありました。これ以上に、主要国から安全保障を担保してもらう文書が必要だとまで言っています。ただ、ロシアが言っている非武装化は、今のウクライナ軍の解体を指しているので、各論の部分では中身が詰まっていないような気がします」
停戦協議を進める一方、ロシアは攻撃の手を緩めておらず、アメリカ国防総省によりますと、ロシア軍は南部のヘルソン州を制圧したと発表しています。首都キエフ周辺は、ロシア軍が停滞するなか、35時間の外出禁止令が出されました。
(Q.ウクライナ側は、なぜこのタイミングで外出禁止令を出したのでしょうか)
兵頭慎治さん:「ロシア軍の動きは、アメリカが軍事衛星などで把握していて、ウクライナはその情報をもらっているはずです。ウクライナは、35時間以内にロシアが軍事的な動きを示すのではないかとみていると思います。空爆は夜間に行われる可能性があるため、とりあえず2晩、外出禁止にしましたが、必要に応じて延長される可能性があると思います。ただ、ロシアからすると、外出禁止令の間に攻撃をした方が甚大な被害が出ない可能性があるので、この期間に軍事行動を起こす誘因になっている部分もあると思います」
(Q.ロシア軍が総攻撃を仕掛ける可能性はありますか)
兵頭慎治さん:「必ずしも、200万人の市民が残る場所を、いきなり全力で制圧するわけではないと思います。ただ、すでに長距離砲劇が始まっているという報道もあります。また、ロシアが制空権を獲得した状態にあるので、空爆も予想されるので、外出禁止令が出されたのだとみています」
緊張高まるキエフでは、ポーランド、チェコ、スロベニアの3カ国首脳が、ゼレンスキー大統領と会談しました。ウクライナへの支援や、ロシアへの制裁強化などが議論されたということです。会談後、ポーランドの首相は「ウクライナを早急にEU加盟候補国にしなければならない」、副首相は「NATOの規則を変えてでも、自衛能力のある平和維持部隊の派遣が必要だ」として、周辺国を中心に平和維持部隊を編制すべきという考えを示しました。
(Q.外国首脳が、戦闘地域に直接行って会談した狙いは何だとみていますか)
兵頭慎治さん:「3カ国とも東欧のEU・NATOのメンバーで、もともとロシアに対する脅威認識が高く、ウクライナでの戦争の火の粉を浴びる可能性がある国です。3カ国とも、NATO全体でウクライナに直接的な軍事支援をしたいと思っている国です。直接キエフに乗り込んで、ゼレンスキー大統領と会って、連帯の意を示しながら『NATO全体として踏み込んだ軍事支援をするべきだ』とヨーロッパ・アメリカに伝えているんだと思います」
◆ポーランドで取材を続ける大越健介キャスターに聞きます。
(Q.ポーランド首相がキエフを訪れた会談について、現地ではどのように受け止められていますか)
大越健介キャスター:「こちらの新聞は16日の朝刊で『キエフへのミッション』と一面トップで報じています。『東欧諸国が中心となってEUの団結を示すことができた』と肯定的な評価をしている紙面がありました。副首相が『平和維持部隊を編成すべきだ』と発言したことも事実として伝えています。ただ、このカチンスキ氏は、副首相という肩書とはいえ、ポーランドの最高実力者として長年君臨してきた人でもあります。EUの中ではしばしば物議をかもす人物としても知られています。こうした背景もあってか、『今回の一連の言動がロシアを刺激するのではないか』という懸念を伝えているメディアもあります。その懸念は、私が聞く所では、ポーランド市民の皆さんも共有しているようです」
◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ポーランド市民の懸念についてどうみますか)
兵頭慎治さん:「平和維持部隊をウクライナに送るという発言は、ロシアを刺激する可能性があると思います。ロシアからすると、NATOがウクライナに入ってきたということになり、攻撃対象になると思います」
(Q.3カ国の行動はNATOの足並みを乱す可能性もありますか)
兵頭慎治さん:「3カ国以外のNATO加盟国は恐らく、慎重な姿勢を示していると思います。欧米の中でも温度差、足並みの乱れを感じさせる動きではないかと感じます」
(Q.東欧の国々が前のめりになることで、NATOとロシアの全面対決に広がる可能性はありますか)
兵頭慎治さん:「まだ、平和維持部隊の派遣が必要という発言のレベルなので、そこまでは想定したくありません。しかし、アメリカも含めてNATOは足並みを揃えてウクライナへの支援を行う必要があります。24日にアメリカのバイデン大統領もNATO首脳会談に参加するので、結束して支援する姿勢を示してほしいと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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