【解説】プーチン大統領に“誤算と焦り”? 協議の進展は…ロシア軍が原発攻撃も ウクライナ情勢

4日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1週間以上がたちましたが、停戦に向けた2回目の協議でも大きな進展は見られませんでした。ロシア側には“焦り”も出ていて、その背景には、プーチン大統領の“誤算”が影響しているとの分析もあります。詳しく解説します。

■ロシア軍が原発を攻撃、占拠か

ウクライナ非常事態庁などによると4日未明、ウクライナ南東部のザポリージャ原子力発電所がロシア軍から攻撃を受け、火災が発生したということです。現地からの映像には、閃光や煙があがっている様子も映っていました。

ウクライナ非常事態庁によると、既に火はほぼ消し止められ、けが人はいないといいます。

ザポリージャ原子力発電所は、ヨーロッパ最大規模の原発です。6基の原子炉があり、ウクライナの発電供給量の約4分の1を占めているということです。

ウクライナ非常事態庁によると、「火災が発生したのは、原子炉ではない訓練施設」ということです。国際原子力機関(=IAEA)は「ウクライナ当局から、原発の放射線レベルに変化はないと報告があった」としています。

ロイター通信は4日、地元当局者の話として「ロシア軍が原発を占拠した」と報じました。ウクライナ内務省も「原発敷地内にロシア軍が入り、管理施設を取り囲んでいる」としています。

■ 2回目の停戦協議「大きな進展なし」 唯一の合意は“人道回廊”設置

原発への攻撃に先立ち、日本時間4日未明、ロシアとウクライナによる2回目の停戦協議が行われました。前回は休憩を挟んで5時間以上行われましたが、今回は約3時間でした。

終了後、ロシア側は「問題の一部は相互理解が得られた」と述べましたが、一方のウクライナ側は「期待した結果は得られなかった」としています。

結局、停戦に向けた具体的な進展はみられなかったということです。双方は、「今月7日以降に3回目の協議を行う」としています。

今回の会談は、大きな進展はなかったものの、唯一合意できたのは「人道回廊」を設置するということでした。人道回廊とは、民間人を避難させる脱出ルートのことで、過去の紛争などでも設置されてきました。

これが設置されている間は、そこを通って避難する人、逆に食料や医薬品を運び入れる人々の安全を保証するもので、範囲限定での一時的な停戦もあり得るとしています。

■父親と離ればなれに…国境近くの駅に避難してきた家族

UNHCR(=国連難民高等弁務官事務所)によると、侵攻開始から1週間でウクライナから周辺の国に避難した人の数は、100万人以上にのぼっています。

避難した人々は、どのような状況なのでしょうか。

ウクライナの隣国、ポーランド・プシェミシルでは3日、多くの人が国境近くの駅につめかける中、避難者の移動に必要な交通機関を無料で開放する動きが広がっています。

ホームには、父親と離ればなれに避難してきた家族の姿もありました。そのうち一組は次のように話していました。

避難者の子ども
「お父さんはすぐ来ます」

避難者の母親
「国を守ってから来るよ」

避難者の子ども
「そうね」

駅には、女性と子供だけで避難している人たちの姿も多くみられました。

■ゼレンスキー氏「私との交渉の席に着け」

こうした状況を受けて、ウクライナのゼレンスキー大統領が3日、外国メディアとの会見で次のように述べました。

ウクライナ ゼレンスキー大統領
「私たちにどうしてほしいんだ? 私たちの土地から去れ。去るのが嫌なら、私との交渉の席に着け。私はいつでもいい。私はかみつかない。私との交渉の席に着け。何を怖がっているんだ?」

ゼレンスキー大統領は、プーチン大統領との直接交渉に応じる準備もできていると強調しています。

一方、プーチン大統領は、ロシア国内で安全保障会議を開き、「特別軍事作戦は計画通り実施されている」と述べました。また、「西側諸国が作り出した『反ロシア』と戦う」と述べ、欧米諸国に対して、強気な姿勢を崩していません。

■プーチン氏、“強気”の裏に焦り? 誤算とは…

ただ、こうしたプーチン大統領による強気発言の裏には、実は、「逆に追い詰められているという焦りがあるのではないか」との見方もあります。

国際安全保障に詳しい慶応義塾大学・鶴岡路人准教授によると、「プーチン大統領は、当初“短期決戦”をもくろんでいたのではないか」ということです。

鶴岡准教授は、「精鋭部隊を少人数派遣して、首都・キエフの政府庁舎などを一挙に占拠して、ゼレンスキー政権を崩壊させるというのが、おそらくロシアが一番狙っていたシナリオだったのではないかと。ただ、実際、そうはなっていないわけです。ウクライナ側を“過小評価”していたことがプーチン大統領の誤算ではないか」と話します。

鶴岡准教授によると、「2014年、南部のクリミア半島をロシアが併合した際、ウクライナ軍側はすぐに投降したり、寝返ってしまったりと、ほとんど抵抗しなかった」ということです。

他方で、プーチン大統領は「ウクライナは国ですらない。国民としてのアイデンティティーも、愛国心もない」と言い続けてきました。だから、今回のウクライナ側の根強い抵抗は“想像以上”だったということです。

■「プーチンは気が狂ったのか?」ワシントン・タイムズ報道

プーチン大統領は、徐々に追い込まれているようにも見えます。

ワシントン・タイムズは「プーチンは気が狂ったのか?」、フォーブズ誌は「プーチンは狂人なのか?あるいは、したたかな策略家なのか?」など、欧米メディアではプーチン大統領の精神状態に関する見出しを掲げています。

追い込まれたプーチン大統領が「今どのような精神状態にあるのか」ということに、世界の関心が集まっています。

鶴岡准教授は「思い通りに進まない状況に対して、プーチン大統領はいらだちを覚えているのではないか。そして、この状況をばん回するために、軍事攻勢を強めるのではないか」という懸念も示しています。

さらに、ロシアとウクライナは4日時点で、停戦協議中です。協議は戦況が有利な方が交渉を優位に進められるという側面がありますので、さらなる攻撃が強くなると予想されています。

     ◇

ロシア側の攻撃は、日を追うごとに激しさを増しているとみられます。今は、唯一合意できた「人道回廊」を通じて、一人でも多くの命が救われることを祈るばかりです。
(2022年3月4日放送「news every.」より)

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