深刻さを増しているウクライナ情勢。ロシア軍の攻撃が激化するなか、設置することになっている民間人が避難するためのルート“人道回廊”。ウクライナとロシアが一時停戦で合意したとされていましたが、2日続けて実現しませんでした。
ウクライナ南東部にある港湾都市・マリウポリ。水道も電気も通信も止まり、食料も入ってこない状態に陥り、20万人以上が避難を待っているとされています。
マリウポリ市・ボイチェンコ市長:「私たちはだまされた。午前9時から午後6時まで停戦になると言われた。準備するようにと言われ、バスも用意した。しかし、きょう、問題をすべて理解しながら、ロシア軍は、私たちのバスの車列を砲撃し、半分を破壊した。避難のため集まるよう呼びかけた瞬間、砲撃が始まった」
マリウポリでは、ロシア軍の攻撃が続いたため、避難を止められる市民の姿がありました。
これに対し、ロシア側は、こう話します。
ロシア国防管理センター・ミジンツェフ所長:「ロシアは民間人や外国人を封鎖された地域から避難させるため、最善を尽くしている。ボルノバーハとマリウポリにおける人道回廊は、毎日、開かれている。しかしウクライナ軍は、ロシア方面に避難しようとする民間人の行く手を断固として阻んだ。開かれた人道回廊に誰一人来なかった」
ウクライナ側に非があるとして、強硬な姿勢を崩さないロシア。そのロシアが、日本時間7日午後4時から、首都・キエフやマリウポリなど4都市で、一時的に戦闘を中止し、人道回廊と主張するルートを設置すると一方的に発表しました。しかし、国外の避難先には、ロシアや同盟国ベラルーシが設定されていて、西側諸国はありません。
ロシア発表の人道回廊は認められないとしたウクライナ。今のところ、避難が始まったという情報は入ってきていません。
4日夜、マリウポリから車で脱出したベルグさん。夫と2人で脱出しましたが、夫の母親は避難したくないと言い張ったため、残してきたといいます。
ディアナ・ベルグさん:「脱出のときに攻撃で殺されるリスクを恐れて義母を残したが、結果的に街に残す方が危険な状態になってしまった」
人道回廊に対しては、機能しないのではないかと危惧しています。
ディアナ・ベルグさん:「情報が完全に遮断されているので、回廊の存在すらわからないかもしれない。友人などを頼って、自分たちでバスを手配して(義母を)迎えに行ってくれる無謀なドライバーを探している」
こうしたなか、アメリカのブリンケン国務長官は、ここにきて“長期化”する見通しを示しました。
アメリカ・ブリンケン国務長官:「残念ながらウラジミール・プーチンはウクライナに膨大な戦力を投入していて、極めて粘り強く勇敢なウクライナ国民をねじ伏せられるほどの戦力だ。この戦いはしばらく続くことを覚悟しないといけない」
ロシアの攻撃は、モルドバとの国境に近い西部の街・ビンニツィアまで及んでいます。8発のロケット弾で、民間の空港が破壊されました。ハリコフでは、ロシア軍の攻撃でテレビとラジオの放送が停止する事態に追い込まれました。相次ぐ民間インフラへの攻撃が、人々を追い詰めます。
2月24日に侵攻を始めたロシア軍は、北部のチェルノブイリ原発、南部のザポリージャ原発に続き、南ウクライナ原発も狙っているという情報を得ていると、ウクライナ側は明かしています。さらに、6日、ハリコフにある核燃料や研究用原子炉がある施設『物理技術研究所』が攻撃されました。
「ウクライナ側が攻撃をやめ、ロシアの要求に従う場合のみ、攻撃をやめる」と主張しているプーチン大統領。ロシアメディアは、「ウクライナによる核兵器の開発を防ぐために原発を管理下に置いた」と国民に向けて報道しています。
長期化の見方が出るなか、アメリカのシンクタンクは、ロシア軍の兵力について、まだ、最精鋭地上軍の大部分がモスクワ周辺にとどまっていると分析します。
米シンクタンク戦争研究所ロシア分析主任のメイソン・クラーク氏:「ロシアの最新鋭の軍事力は、まだ実際に使われていない」
中東では、ロシア軍が「市街戦」の知識が豊富なシリア兵を集めているという報道があります。契約は7カ月単位で、約80万円が約束されているという情報です。
米シンクタンク戦争研究所ロシア分析主任のメイソン・クラーク氏:「大規模な都市掃討作戦を実行すれば、残念ながらウクライナ軍の形勢逆転か、マリウポリのように降伏を迫られるだろう」
そんななか、中国が“仲介”にあたる考えを示しました。
中国・王毅外相:「必要なときに国際社会と共に必要な仲介をしたい。複雑な問題を解決するのに必要なのは冷静と理性」
◆千々岩森生中国総局長に聞きます。
(Q.中国は本当に“仲介”に乗り出すのでしょうか)
王毅外相の「仲介する」という発言の前に「国際社会と共に」という言葉がついているのがポイントだと見ています。あしたにも紛争地に乗り込んで、リーダーシップを取りながら、ロシアとウクライナの間にブルドーザーの様に割って入っていく可能性は低いと見ています。中国の外交スタイルというのは、核心的利益と位置付ける問題には、外交的、軍事的圧力をかけます。日本は近くにいるので、その印象が強いと思いますが、引いて見ると、中国が関わっている地域というのは多くありません。アメリカは自由・人権という旗を立てて、いろいろなところに介入していきますが、中国の外交文化は違います。
(Q.“仲介”というのは、どのようなことをイメージしたものになるのでしょうか)
例えば、北朝鮮問題での6カ国協議のようなことをイメージしているのではないかと思います。今回でいうと、ウクライナ、ロシアの当事者。国連安保理のアメリカ・イギリス・フランス、そして中国。こういった形で関わっていくのでは。そして、このなかにドイツやベラルーシなどの関係国が入る。6、7カ国をイメージしているのではないかと見ています。背景にあるのが、2日前、アメリカのブリンケン国務長官が王毅外相に「誰が自由や主権のために立ち上がるのか、世界は見ている」と迫ったといいます。国際社会の風向きが中国にとって、決して好ましいものではない。中国への批判を懸念している背景もあるのではないかと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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