高島)
ロシアのウクライナ侵攻について、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さん、そしてロシア政治がご専門の慶應大学教授・廣瀬洋子さんにお話をうかいがます。
板倉)
ウクライナ全土で侵攻を続けているロシアですが、赤く塗られた地域はすでにロシア軍が制圧したとされています。ロシア国防省の発表では、キエフの北西部の空港を制圧したとしており、その際にウクライナ軍200人以上を殺害、またキエフの西側についても封鎖したということです。そして首都キエフの中心部でも銃声が聞こえるなど、市街戦となっているようですが、いかがでしょうか。
黒井さん)
とにかく、ロシア軍とウクライナ軍では圧倒的な戦力差があり、ロシア軍の装備も含めて上なので、かなり一方的になって、早い段階で占領されるかと思ったんですが、ウクライナ軍が、ロシア軍を押し返しているという情報が出ていて、ロシア側は当初思っていたほどのスピードが出せてない。特に昨日、今日は、ロシアの航空機が撃墜されたり、装甲車を多数破壊されたりした映像情報出てきていますが、キエフへの侵攻は早く、そこにはロシアも力を入れていて、北西部の空港は、まずヘリコプターで突入、制圧して、その後に援軍を入れようとしたが、援軍を運んできた航空機が撃墜されたりと思ったように進軍できていない状況。
高島)
居住区にも着弾していますし、クラスター弾を病院に、という話もありますが?
黒井さん)
クラスター弾というのは、シリア紛争でロシア軍が介入して使ってますんで、ロシア軍からすれば、通常のやり方。ただ今のところは、ウクライナ軍を狙ってるんですが、その途上で、民間も被害にあうということですね。東側では市街戦になっているので、民間の被害というのは、どうしても出てくると言うとになります。
高島)
廣瀬さん、侵攻からあっという間にキエフまで来たという感じですが、ここまで侵攻を急いだ政治的な理由は?
廣瀬)
政治的利用は主に2つあると思います。早期に片をつける事で欧米が関与できないようにするということ。もう1つとても重要なのが、北京オリンピックとパラリンピックの間に、できれば戦闘を終わらせて、中国の顔に泥を塗らないようにしたいって事もあると思います。
板倉)
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアにいる」と言っていますが、ゼレンスキー大統領はすでにキエフを離れているという情報が、ロシア国内では出ていますが、そのあたりはいかがですか?
黒井さん)
ロシア側がそういう情報を流して、ウクライナ側の士気をくじこうということですね。これに対してゼレンスキー大統領は、「自分はまだここにいますよ」ということで、キエフ市内をバックに、このようなメッセージを出したということです。
板倉)
ロシア側は、ゼレンスキー大統領の居場所をつかんでいるのでしょうか?
黒井さん)
メッセージはライブで流しているわけではないので、もちろん撮ったあとに移動してると思うんで。ロシアが居所をつかめているか、つかめていないか分からないんですが、攻撃目標の1つであります。軍事的にやる可能性もあるし、ロシアの工作機関が相当数市内に潜伏してますので、テロが起こったみたいな形の建前で、殺害する可能性もあるし、特殊部隊が潜入して逮捕するなどもあるので、ゼレンスキー大統領が表に出てくること自体は、やはり、リスクが高いことだと思います。
高島)
そしてあの停戦交渉の話も出てきました。ロシア側もベラルーシの首都ミンスクに代表団を派遣する意向というのを示していますけれども、廣瀬さん、交渉の実現性をどうみていますか?
廣瀬さん)
ウクライナは、ロシアに中立を絶対に守るような非常に拘束力の強い条約等の締結が求められるはずです。いずれにせよ、ウクライナは主権を侵害されますが、それを飲めるか、というところだと思います。ウクライナにその覚悟がないと交渉は成立しないかもしれないです。
高島)
そもそも、交渉の場が持てるのか?というところもまだ分からないと思いますが、ゼレンスキー大統領は交渉の仲介をイスラエルの首相に要望したという話も入っています。なぜイスラエルの首相なんでしょうか?
廣瀬さん)
仲介者は必ず必要になってくると思いますが、NATOの国など西側の国では成り立たないことですし、旧ソ連諸国にもそのような器の国はありません。イスラエルはそこそこの大国で、また旧ソ連とイスラエルは非常に関係が深くイスラエルにはロシア系の住民も多くいます。そして、中立的にも交渉を展開できそうな数少ない国ではないかと思います。ですので、イスラエルに頼んだというのは納得できる話です。
高島)
停戦交渉が実現した場合、黒井さんはお互い、どんなことを主張するとお考えですか?
黒井さん)
交渉が始まってもこれが進む可能性は限りなく低いと思います。ウクライナ側は、ある程度の妥協で許してもらおうということだが、ロシア側の狙いは「非武装化」。これは全面降伏に近いということで、ロシアがその後、ゼレンスキー大統領を退陣させて自分の息のかかった者を立てるということで、その後はどうにでもなると見てます。中立というのは1つの建前であって、その後にやって来るのはロシアの永世国化のような、かなりコントロール下に置き、占領に近いようなことをやってくると思います。
高島)
最終的には、ウクライナにロシア軍を長期的に駐留させるということも考えられる?
黒井)
今は「軍を叩く」という名目で来てますけども、傀儡を立ててると「治安維持を任される」という名目が立ちますのでウクライナ全土に軍を展開していくということなると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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