各国ロシアに制裁強化も・・・なぜプーチン大統領を止められない?専門家・記者解説(2022年2月25日)

アメリカのバイデン大統領は、ロシアに対し、“強力な追加制裁”を発表しました。ロシア最大の銀行である『ズベルバンク』をはじめ、主要な金融機関を新たに、対象に指定しました。加えて、NATO(北大西洋条約機構)加盟国の防衛のためとして、7000人規模の部隊をドイツに派遣することも決めました。

イギリスも足並みを揃えます。ロシアの大富豪で、プーチン大統領の義理の息子だったシャマロフ氏など、100以上の個人や企業の資産を凍結。プーチン大統領の最側近・パトルシェフ氏なども含まれていて、“包囲網”を作る狙いです。岸田総理も25日朝、会見を開き、半導体の輸出規制などの追加制裁を発表しました。

しかし、当のプーチン大統領は強気です。
ロシア・プーチン大統領:「ロシアは世界経済の一部であり続ける。一部ある限り、ロシア経済が損害を受けるはずがない」
プーチン大統領が「損害を受けるはずがない」と言う通り、制裁が“実効性”を持たない可能性があります。

皮肉にもバイデン大統領自身、こう述べています。
アメリカ・バイデン大統領:「何が最適な制裁なのか誰もわからない。結果が出るには時間がかかるだろう」

象徴的なのが、最も強い制裁とされるSWIFT(国際銀行間通信協会)からの排除は見送ったことです。銀行の国際的な決済ネットワークであるSWIFT。国をまたいだ決済ができなくなれば、ロシアの貿易や経済にとって大きな打撃となります。
アメリカ・バイデン大統領:「SWIFTからの排除は常に選択肢の一つだが、ヨーロッパでは望んでいない国もある」

原油や天然ガス、小麦など、ロシアとの貿易が止まれば、自国の経済にも大きな影響が出る恐れがあります。つまり、SWIFTからの排除は諸刃の剣。排除を望まないのは日本政府も同じです。
日本政府関係者:「自分たちの首を絞めるような制裁はできない。日本経済が死んでしまう」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、こう訴えました。
ウクライナ・ゼレンスキー大統領:「今、我々は自分たちの力だけで国を守っている。世界の強国は傍観しているだけ」

世界から孤立を深めるプーチン大統領。国民はどう受け止めているのでしょうか。

◆前田洋平モスクワ支局長の報告です。

ロシアでは反戦ムードが高まってきています。今朝のスポーツには『サッカーどころではない』と一面に書いています。反戦の声を上げようという訴えです。昨晩からは、SNSの呼び掛けで集まった若者たちを中心に全国各地でデモが繰り広げられました。1800人ほどが拘束されたということです。皆さん「なぜ、ここまでやるのか」と戸惑いを隠せていませんでした。

また、ロシアに住むウクライナ人に話を聞きました。戦争について聞いた瞬間、泣き崩れてしまって「家族のことが不安でたまらない」と話していました。

ロシアとウクライナは非常に近い国だから、皆さん、いろいろな感情を抱いています。ただ、まだ、一つ一つの感情が、プーチン大統領を止めるための大きなうねりにはなっていないというのがロシアの現状です。不安や恐怖。憤りを一つにまとめ上げるためには強力なリーダーが必要だと思います。そういったリーダーが出てきていない。

一つポイントなのがSNSです。実は、ソ連の崩壊は、ファックスの普及が大きな要因の一つといわれています。情報が即座に交換できるようになり、人が集まるようになりました。今、SNSで急速に情報が拡散されますから、デモなど、一つのうねりを作るには、大きな武器になると思います。そこが、今後、プーチン大統領を止める希望になるかなと思います。

ロシア国内の反対世論はプーチン大統領に影響を与えることができるのでしょうか。

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.プーチン大統領がウクライナとの交渉に応じた場合、事態が進む可能性がありますか)
軍事侵攻・政権転覆というプーチン大統領のシナリオを止める一つの役割として、外交的な交渉が行われると、状況は変わっていくと思うので、期待したいと思います。

(Q.今後、SNSなどで起きている反プーチンデモが大きくなって、プーチン大統領の足もとを揺るがす可能性はありますか)
今のところ、軍事的な動きを止めるにはいたっていませんが、2年後にロシアの大統領選挙が予定されています。プーチン大統領からすると、今のウクライナへの軍事作戦、政治工作が長引けば長引くほど、ロシア国内で反発の動きが高まります。今回の作戦は短期で終了させたいと考えていると思います。

欧米各国はロシアへの制裁をさらに強めています。特にアメリカやイギリスは、ウクライナへの軍事侵攻を受け、ロシア最大の銀行を含む主要な金融機関でのドル取引禁止を決めました。また、EU(ヨーロッパ連合)の緊急首脳会談は、ロシアへの金融やエネルギーなどの分野での制裁や輸出の制限を行うことを採決しています。

(Q.欧米の追加制裁で、プーチン大統領を止めることはできますか)
残念ながら難しいです。ロシアは2014年のクリミア併合から、欧米諸国による度重なる経済制裁を受けてきましたが、今回の軍事侵攻を決断しました。経済制裁を追加したとしても、プーチン大統領は最後まで突き進んでいくだろうと思います。

(Q.EUがプーチン大統領とラブロフ外相の資産を凍結することで合意しましたが、これも影響はありませんか)
残念ながら影響はないと思います。

(Q.批判や孤立を恐れることなく、プーチン大統領がここまで進める理由はなんですか)
外交的な要因からすると、冷戦の敗者として、アメリカが一方的なヨーロッパの安全保障秩序をロシアに押し付けた。つまり、NATOの拡大です。その雪辱を晴らしたいという長年の思いがあると思います。

国内要因からすると、2年後に大統領選挙を控え、プーチン大統領は国内の支持率が低下傾向にあり、政権基盤は必ずしも盤石ではありません。強硬姿勢をアピールして、実行力があるところを見せながら、アメリカと対等に渡り合えるリーダーだと国民に印象付けたいという理由もあると思います。

(Q.プーチン大統領を止める方法は考えられませんか)
経済制裁では残念ながら止めることは難しいと思います。SWIFTからの除外は、欧米側からすると最強最大の経済制裁になりますが、ロシアとの貿易を欧米が辞めてしまうことになるので、ロシアのエネルギーに依存するヨーロッパの国からすると返り血を浴びることになります。各国が連携してここまでの制裁を打ち出すことができるかというと、今の段階では難しいと思います。

ロシアを止めるのは難しいのでしょうか。アメリカは、どう考えているのでしょうか。

◆布施哲ワシントン支局長の報告です。

「もっと厳しい制裁を強めるべき」「プーチン大統領個人をターゲットにすべき」という声が上がっています。そのほかに、制裁の効果そのものを疑問視する声も上がり始めています。いま、進んでいる軍事作戦、これを止める効果がないのではないかという批判があります。これに対し、バイデン大統領は、「制裁の効果が出てくるのには時間がかかる。もう少し、様子を見ないとわからない」と苦しい答弁をしています。

今回、ヨーロッパに新たにアメリカ軍7000人の派遣を決めました。これは難民が殺到することを想定して、ポーランドの国境沿いに検問所を設けて、それを運営する任務にあたることが検討されています。それ以外には、サイバー攻撃でロシア軍を妨害するという案も出ています。ただ、物理的な破壊、人命の損失が発生した場合、ロシアから重大な報復があることが予想されますので、これもなかなか踏み切れません。

直接的な軍事介入を避けながらもどうやってウクライナを支援するのか、非常に悩ましい状態が続いています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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