第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、中国の名匠ジャ・ジャンクー監督最新作の『帰れない二人』本編映像が解禁となった。
山西省の都市・大同ダートン。チャオはヤクザ者の恋人ビンと共に彼女らなりの幸せを夢見ていた。ある日、ビンは路上でチンピラに襲われるが、チャオが発砲し一命をとりとめる。５年後、出所したチャオは長江のほとりの古都・奉フォン節ジェ
へビンを訪ねるが、彼には新たな恋人がいた。チャオは世界で最も内地にある大都市・新疆シンジャンウイグル自治区を目指す。そして2017年がやってくる。
この度解禁された映像は、ビンが強面の部下たちとともに、タバコをふかしながら真剣な面持ちで、チョウ・ユンファ主演の『愛と復讐の挽歌』（87）を鑑賞しているシーン。長編デビュー作『一瞬の夢』から一貫して、社会変革の波に取り残され、発展の裏で苦難にあう人々を通して、人間の普遍的な“生”の在り方を描き続けるジャ・ジャンクー監督だが、『帰れない二人』で初めて描くのは“江湖”（＝裏社会）に生きる男女、ビンとその恋人チャオの17年間だ。チャン・チェ監督、ジョン・ウー監督、ジョニー・トー監督など、数々の香港ノワール作品が大のお気に入りだというジャ監督は、中学生の頃から輸入ビデオの上映会でこれらの作品を観て育った。1949年、中華人民共和国建国後、中国の裏社会の伝統が途切れるなか、香港ノワール作品を通して「黒社会に生きる人間が特に重んじてきた“義理と人情”という伝統的な価値観に興味を持った」と語る。本作で描かれる17年にわたるラブストーリーは、この価値観の変遷を描いた物語でもある。
本編映像で使用されている曲は、チョウ・ユンファ主演の『狼／男たちの挽歌・最終章』（89）の主題曲であるサリー・イップの「浅酔一生（愛に酔って）」。この曲は過去作でも何度か使用されている。実は、ジャ監督のユンファ愛は過去作からも見て取れる。ユンファファンなら一度は、真似をしたことがあるはずだが（？）、『男たちの挽歌』シリーズでは、ユンファが火の着いたドル紙幣でタバコに火を着ける名演出がある。ジャ監督の過去作『長江哀歌エレジー』(06)でも登場人物がその真似をしている場面があるのだ。
タイトル：帰れない二人
原題：江湖儿女
英題：Ash is Purest White
監督・脚本：ジャ・ジャンクー
出演：チャオ・タオ、リャオ・ファン
『帰れない二人』は9月6日より全国順次公開となる。
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