Masahide Maeda, Professor, law School, Tokyo Metropolitan University
研究会「サイバーセキュリティ」の第三回目。前田雅英・首都大学東京法科大学院教授がサイバー犯罪について刑事法学の視覚から話し、記者の質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 杉尾秀哉(TBSテレビ)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/02/r00025268/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年3月号に掲載)
サイバー犯罪 刑事法学の視点から
中央省庁や防衛関連企業へのサイバー攻撃。遠隔操作ウイルスで他人のパソコンを乗っ取り、なりすます事件。手口や技術をますます巧妙化、悪質化させて増え続けるインターネット上の犯罪行為に、この先どう対処していけばいいのか。
ゲストの前田雅英教授は、サイバー犯罪の進展に刑事法が後れを取ってきた歴史を概説したうえで、「日本の立法システムが、ネットの速い動きに対応できていないのではないか」と問題点を指摘した。
もちろん、まず規制ありきではなく、通信の秘密や表現の自由は確保しなければならない。だが、たとえば「情報を守る」話をしようとすると、「スパイ罪を作るのか」といった極端な議論に陥る。「○か×かという発想はまずい。何をどの範囲で守るのか、具体的に検討すべきだ」と、前田教授は訴えた。
政府や警察の今後の取り組みとして、豊富なデータや技術を持つ民間との協力が不可欠であることは間違いない。特にウイルス対策会社との情報共有は不可欠だと考えられる。しかし教授は、これらの多くが海外の企業であることから「サイバー犯罪には国と国との疑似戦争の側面がある。外国に頼ってしまっていいのだろうか」と疑問を呈した。興味深い問題提起であったと思う。
それでもニッポン警察のサイバー捜査能力全般については、「世界のなかで決して遅れてはいない」と高く評価。「日本の技術力があれば必ずうまくいく」と、将来に向けては、明るい見通しを語った。
ただ、冒頭の遠隔操作事件では、警察は無関係な4人を誤認逮捕し、一部の人に「自供」までさせた。立法の怠慢や脆弱性はその通りだとしても、捜査機関が不始末の理由を「捜査環境」に求めるわけにはいくまい。警察行政や捜査実務に精通した研究者ならではの辛口の分析も、うかがいたかったところである。
日本経済新聞論説委員
坂口 祐一
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