新型コロナウイルスの流行に伴い、感染症対策の前線に立つ各地の知事が注目を集めています。かつてと比べて、大きく変わりつつある今の「知事像」について、佐賀大学経済学部の児玉弘准教授(行政法)に話を聞きました。聞き手はサガテレビ解説主幹・宮原拓也です。
じじい放談6「知事に注目!」サガテレビ解説主幹宮原拓也コラム【取材後記】
都道府県知事という存在が、かつてここまで脚光を浴びたことがあるだろうか。ひとえに新型コロナウィルスの流行という危機が、知事たちにとっては思いもよらぬ「ひのき舞台」となったのだ。政府と真っ向勝負の小池・東京都知事、国に先駆けて休業要請の早期解除を打ち出した吉村・大阪府知事が東西の「横綱」とすれば、当初緊急事態宣言が発令された北海道や福岡、兵庫などが「大関」クラスとなろうか。
何も知事たちがこぞって目立ちたがり屋なのではない。今回のコロナなど感染症への対応は、感染症法という法律でちゃんと「権限は都道府県知事」と定められているから、当然といえば当然ではある。では、なぜここまで知事が注目を集めるかと言うと、主役を引き立てるヒール(悪役)がちゃんといるからこそ、なのだ。ヒールが強ければ強いほど、主役は目立つ。
そのヒールは政府、官邸である。いつもは強大な権力で主役を張っているのだが、こと感染症に関して言えば、県知事にはかなわない。だから、やることは本筋の対策ではなく、マスクを配ったり、本来は地方の教育委員会がすべき一斉休校だったり、休業補償の現金支給だったりと慌てふためいている。おまけに、やることなすこと失敗続きで、マスクは「アベノマスク」と揶揄され、一斉休校はコケにされ、30万円の休業補償も閣議決定後に「やっぱり個人に10万円にします」と朝令暮改…。いずれも知事の一人勝ちだ。
何とか形勢逆転を狙ったヒールの「奥の手」が、例の「GoToキャンペーン」だった。ただし、弱り目に祟り目。冷え込んだ旅行需要の回復を目指したところ、何と直前に東京中心に全国で感染者が再燃して急増。これまた、各県の知事から「この時期に無茶」「まずは地域単位でやるべき」と猛反発を食ってしまい、「では、東京は除外します」と早々に当初案を引っ込めてしまった。リング上の悪役も、フォール寸前である。
こうなると、勝ち馬に乗るのが得意なニッポン国民。「知事あっぱれ」「ガンバレわが知事」とばかりに、政府批判にも火が付く。下世話な井戸端会議では、「吉村さん、ハンサムでええワ〜」とか「私は北海道の鈴木さん派」と、ジャニーズばりのイケメン知事比べに成り下がってもいる。
ただ、ちょっと立ち止まって考えたい。知事も首相側も、聴衆(県民、国民)からの喝さいを浴びるのは、究極の選挙運動のためでもある。人気狙いの演出や話題性だけにとらわれてはいけない。コロナ対策とは言え、国も地方も、過剰な財政出動に走ってはいないか。本当に県民、国民のための政策か。メディア側も話題性頼みの報道になっていないか。
まさにそういうところを冷静に見極める眼力を持つのが、民度の高さである。マスクを着け、手洗い消毒がうまい国民だから「民度が高い」とは、決して言わない。
サガテレビ解説主幹宮原拓也
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