時代に合わせたPTAのあり方 「無理しないでもできることがある」尾道・高須小の取り組み (広島発)  (2023/03/16 18:34)

育児の話題をお伝えする3940のコーナーです。
子供たちが卒園・卒業しまもなく進級・進学を迎えますが、PTAの役員も交代する時期です。そもそも「PTA」とは、「Parent Teacher Association」保護者と先生が一体となったもので、戦後、「家庭教育の充実を図り、学校・地域と連携して、子供たちのために活動する団体」として全国に広がりました。
活動は、幼稚園や学校によって異なりバザー、廃品回収、運動会のお手伝いなど様々です。
しかし、共働き世帯が増加する今、PTA役員の担い手不足が問題となりその在り方も変化しているようです。

安芸郡府中町にある認定こども園。
363人の園児がいるこの園にPTAはありません。
10年以上前は、盛んだったといいます。

【認定こども園つばめ・久保田貴八郎園長】
「これが当時のバザーのちょっと想像を絶するぐらいの時間と労力がかかったと思います。
保護者の方が用意されて保護者の方が販売されて。運動会の場面もあるんですけど道具の出し入れとか、片付けとかいろいろお力を貸しいただいて」

当時、役員は毎週のように集まって活動をし、PTA予算の管理をしたり、保護者への配布物をつくったり、たくさんの役割を担っていたといいます。園は、そのPTAを、2012年に廃止しました。きっかけは、幼稚園から保育園機能も担うこども園となり、共働き世帯が増えたこと。当時は反対する保護者もいたと言います。

【認定こども園つばめ・久保田貴八郎園長】
「結構大変な部分がありました。それを何度も何度も話をさせていただいてひとつずつ解決していった経緯はあります」
Q:PTAが無くなって困ったことというのはなかったですか?
「ありません。そこはないです」
Q全く?
「はい。職員が増える関係から園でできる仕事がほとんどできる」

こども園になったことで、職員が倍以上に増加しPTAに協力してもらっていた仕事が職員で分担できるようになったと言います。こうしてPTAが無くなって10年以上。今通う保護者の反応は?

【保護者】
「あるよりはないほうが親としては助かりますよね」
「手伝ってといわれることは全くないのでとても安心して過ごせてます」
「入る前から知っていてここを希望させてもらいました」
Qあえて?
「はい。ただでさえ保育園の行事で(仕事を)お休みをする上、それにまたPTAの活動となると、ちょっと厳しいなというのがあったので、なるべくないところを選ばせてもらいました」
「共働きからしたらすごく助かることだし、役員や係を気にせずに、保育園の中の行事を純粋に楽しめているというのはあります」

園選びにも影響するPTA。
一方で園長は、職員が増えたからできたことで、どこの幼稚園や小学校でもできるわけではないと言います。

【認定こども園つばめ・久保田貴八郎園長】
「職員が少ない中で、準備片付けをしようと思うと先生たちにものすごい負担がかかります。どうしても、準備片付け、あるいは支援だとか、力だとかそういったものが必要な園もあります」

そこでTSSでは県内の私立幼稚園を対象にPTAに関するアンケート調査を行い、52の園がメールで回答を寄せてくれました。
その結果、8園が、役員の成り手が見つからずPTAを廃止に。
また、「困っている」が12園、「課題がある」が6園で、半分がPTAの運営に苦慮する実態が明らかになりました。

「いかに役員を引き受けないようにするかを考える保護者が増えている」
「働いていても担えるPTA制度への変革を模索中」
「どうしたらいいのか本当に困っています」
園側の苦悩が伝わります。

一方で、必要性も訴えます。
「保護者同士の関係が希薄になっているからこそ必要だと思います」
「子供たちのために何ができるかを考える機会や組織はあり続けてほしいと思う」

PTAへの加入が任意となる小学校ではどうなのでしょうか?
教育委員会で聞いてみると…。

【県教育委員会・生涯学習課桑原智津子課長】
「毎年年度末それから新学期が始まったくらいになると保護者の方からPTAの役員決めが負担であるとかそもそも加入は、強制加入なのかといったお問い合わせというのは、たくさんいただいております。学校に対する様々な支援を行って頂いておりまして、本当になくてはならない存在だと考えています」

PTAはどうあるべきなのか。ヒントを探り、ある学校を尋ねました。
今年創立150周年を迎える尾道市立高須小学校。
校長先生と密にコミュニケーションを取るPTA会長の工藤さん。
2年前、改革を行いました。

【尾道市立高須小学校PTA会長・工藤孝之さん】
「みなさんが強制ではなくてボランティア制度というのを取りまして、行事をするごとにボランティア募集して、参加する方が応募してくださっている方がやっていると」

半強制的に役目を担うクラス代表制を廃止。必要な時に協力を呼びかけ、行事や取り組みも見直しました。

【尾道市立高須小学校PTA会長・工藤孝之さん】
「みんなが本当に楽しく参加できるPTAってどういう形だろう。すべては子供たちの笑顔のためにという」

コロナ禍で行ったのは、青空映画祭。こどもたちにたのしい外出機会をと企画しました。
一方、必要性を感じ残したのは、ベルマーク集めです。家庭から回収したベルマーク。
一番手間のかかる整理作業を、子どもたちと一緒に楽しく参加できる作業に変えました。
すると40~50人の親子が集まりました。

【尾道市立高須小学校PTA会長・工藤孝之さん】
「PTAって親御さんだけでやるものが結構多かったなと今まで思っていて子どもが主体になるものをたくさんやろうと」

ベルマークを残した理由も子供たちのためです。今年度は黒板消しクリーナーに。これまでは、手ではたいて使っていたので、衛生的になりました。他にも音楽室では…。

【尾道市立高須小学校・福島健作教頭】
「昨年度の今頃の時期に買っていただいたものです。バッハとモーツァルトどっちか分からない感じだった。なかなか日に焼けて白かったんですけど。先生の都合とか保護者の都合ではなくて子どものためにどういうことができるかという話をいつもさせてもらっているんです。そういう所をうちのPTAは相談させてもらうことができる」

市の予算で導入された電子黒板。児童が教室で躓く危険性がありました。
そこで壁付けにし、その予算をPTA会費から捻出したのです。
取り組み内容はすぐに保護者へメールで配信。広報誌で詳細を伝え情報を共有し、活動を見える化しています。するとボランティア制でも大勢の親子が協力してくれました。
こうして結集した力で、去年、PTAがコロナ禍だからこそと子供たちと取り組んだイベントがあります。

【尾道市立高須小学校・杉原妙子校長】
「子供とおうちの方と先生たちがすごいいい顔で話しをしている場面をたくさんみた、その時になんとも言えない。なんと幸せな空間なんだろうって。いい思い出を作ってくださった。嬉しかったですね」

今月、PTAからその思い出が形となり児童に配布されました。

【子どもたち】
「いつも味わえない感じがして楽しかったです」
「一番楽しかった行事でした。企画してくれたことがとてもうれしかったです」

すべては子供たちの笑顔のために。
高須小学校のPTA活動は、今年度、文部科学大臣に表彰されました。
この日も名乗りを上げた保護者が新たな計画を立てていました。

【保護者】
「すごい楽しいです。皆さんが前向きなのでいやいややっている人が一人もいないんですよ。本当にやりたい人がやっているその集団なので、家のこととか子育てのこととかも無理せずに参加できる」
「やっぱりみんなの笑顔ですよね。実際に何かをするたびに子供が楽しくできる地域の人たちとのふれあいもできる。PTAは間違いなくいりますね」

変化の時を迎えているPTA。
時代に合わせ地域に合わせた新たな形とは?

【尾道市立高須小学校PTA会長・工藤孝之さん】
「無理をしなくてもできることがある。できることはなんでしょうとみんなでゆっくり考えればいいんじゃないかと思う」

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