【富士山噴火対策】避難は「原則徒歩」に見直し…なぜ?  過去には巨大地震が“引き金”懸念も

富士山が噴火した時の避難計画が、大きく見直されました。避難の対象者が拡大し、車では渋滞が発生して逃げ遅れが出るおそれがあるため、避難の方法が「原則徒歩」に変わりました。溶岩流から徒歩で逃げることは可能なのでしょうか。また、専門家は、巨大地震の後に富士山が噴火する「連続災害」も懸念しています。

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火山・地質の専門家と、富士山の麓の町、山梨・富士吉田市を歩きました。歩道脇に現れたのは溶岩。約2000年前、富士山が噴火した時に流れ出た溶岩だといいます。

山梨県富士山科学研究所 吉本充宏主幹研究員
「このあたりから本物の溶岩。富士山から流れてきた溶岩です」

富士山は活火山でありながらも、300年以上噴火していません。しかし――

山梨県富士山科学研究所 吉本充宏主幹研究員
「富士山はいずれ、必ず噴火すると思います。そのいつかっていうのが非常に問題」

しかも、富士吉田市では近年、市街地からわずか2キロほどの場所に、かつての噴火口があることが判明。噴火が想定される火口の範囲が広がったことで、市街地に溶岩流の到達する時間が早くなったのです。

山梨・富士吉田市や静岡・富士市などには、噴火からわずか2時間で溶岩流が到達、12時間後には静岡・裾野市などに到達すると予測されています。さらに神奈川県の一部の地域まで到達する可能性が出てきました。

さらに、避難の対象者は約1万6000人から約11万6000人と7倍になりました。登山者や観光客を加えると、さらに増えるとみられます。

こうした中、29日、静岡・山梨・神奈川の3県などでつくる協議会が新たなハザードマップをもとにした避難計画を公表しました。

大きく変わったのが避難方法です。これまでは車での避難を想定していましたが、対象者が拡大したことで渋滞が発生、逃げ遅れが出るおそれがあります。

そのため、新しい計画では、溶岩流が24時間以内に到達する地域のうち、火砕流などの危険がない場所の住民は高齢者などをのぞき、「原則徒歩で避難」とされたのです。

溶岩流から「徒歩」で逃げることは可能なのでしょうか。避難計画の検討委員である吉本研究員は、「人間が歩くよりも遅いスピードで流れてくる。なので十分、歩いても避けられる。流路から少し離れれば、数百メートル離れれば、命の危険はなくなりますので」

新たな計画では、登山者などの“避難のタイミング”も示されました。登山者は気象庁からの噴火の予兆に関する臨時情報が発表されたら、下山を開始。観光客は、噴火警戒レベルが3となる前に避難するとされました。

富士山はいつ、どこから噴火するかわかりません。吉本研究員は、規模や火口の場所など様々な噴火のパターンを想定した対策が必要だと話します。

山梨県富士山科学研究所 吉本充宏主幹研究員
「ここから噴火した場合と、ここから噴火した場合では、逃げられる方向が違うんですね。あらかじめ逃げる方向って決められないんです。避難訓練を通して検証して、さらにブラッシュアップして、いい避難計画にしていく作業が今後、必要になってくると思います」

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さらに、危惧されるのが大量の火山灰です。

山梨県が行った車の走行実験では、富士山の火山灰を敷いたコースに車を走らせると、タイヤが空転し進めない状態になりました。

富士山周辺では火山灰が最大50センチ以上積もることが予想されていますが、四輪駆動以外の車は火山灰の厚さが10センチを超えると動けなくなることがわかりました。

富士山の噴火では、火山灰によって首都圏にも大きな影響が出るとされています。

300年以上前におきた宝永噴火クラスの噴火があった場合に火山灰が積もる量を示した図では、火山灰は偏西風の影響で富士山の東側を中心に多く積もるとされています。富士山に近い静岡・御殿場市では50センチ以上、神奈川県の県央部では10センチから30センチ、東京都心などでも2センチから10センチ積もる予想となっています。

車が動けなくなる以外にも、影響があります。

火山灰は非常に細かい粒子です。吸い込んでしまうと大変危険で、特にぜんそくなどの病気を持つ人は、吸い込まないようにするなど厳重な注意が必要です。また、電線がショートして停電したり、浄水場では取水ができずに断水したりするおそれがあります。

大量の火山灰が畑を覆ってしまうと、農作物の栽培ができずに長期的に収穫量が減ります。

交通機関では、飛行機のエンジンが火山灰を吸い込むと重大なトラブルがおきるため、飛行機の運航ができず滑走路も使えません。鉄道の線路に火山灰が積もると、列車は運行を見合わせる可能性もあります。

どのように対策をしたらいいのか、参考になるのが、頻繁に噴火をしている鹿児島県の桜島での事例です。

噴火した場合、生活道路にも大量の火山灰が積もりますが、火山灰を除去するロードスイーパーによって車の通行ができるようにしています。

ただ、富士山はすでに300年以上、噴火がおきていません。国や首都圏の自治体でも、灰を除去するための準備は行われていないのが現状です。

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また、専門家たちが懸念しているのが「連続災害」です。

富士山で最後の噴火となった「宝永大噴火」は1707年12月16日におきました。この49日前には、南海トラフを震源とする巨大地震「宝永地震」が発生していて、これを引き金に噴火が発生したと言われています。

富士山火山防災対策協議会では今後、巨大地震の後に富士山が噴火するケースなど、連続災害を想定した避難計画の検討を行いたいとしています。
(2023年3月29日放送「news every.」より)

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