アメリカの現職のペロシ下院議長が、25年ぶりに台湾に降り立つとみられます。
中国外務省・華春瑩報道局長:「(Q.ペロシ氏が台湾を訪問した際の具体的な反撃措置は)教えられることは、中国の主権と安全利益を損害するようなアメリカの行為には、必ず、代償を払う」
報道局長が自ら会見するのは、ウクライナへの全面侵攻が始まった2月24日以来です。それだけこの問題に対し、中国はピリピリしています。
ロイター通信によりますと、複数の中国軍機が2日、台湾海峡の中間線に接近したといいます。空母の動きも気になります。台湾メディアは、『遼寧』『山東』の2隻が相次いで出港したと報じています。台湾方面に向かっているのかは不明ですが、現在、台湾周辺には、アメリカの原子力空母や強襲揚陸艦が展開していて、緊張は高まるばかりです。
アメリカ政府としては、台湾訪問は、あくまでペロシ氏個人の判断という立場です。そのうえで、釘を刺すことも忘れません。
アメリカ・ブリンケン国務長官:「ペロシ下院議長が訪問を決めて、それに対し、中国が危機的状況を生んだり、緊張を高めるなら、その全責任は中国政府にある」
大越キャスターの質問に対しては、こう答えました。
アメリカ・ブリンケン国務長官:「(Q.ペロシ議長の台湾訪問に関する懸念事項を岸田総理に伝えたか)それについては話していないが、岸田総理には一言だけ伝えた。『総理のNPT会議出席は、全世界に強い意志を示すことになる』と」
米中はこの事態をどう収めるのでしょうか。国連で外交・安全保障を取材してきた記者は、今後の中国の出方に注目しています。
コロンビアメディア『NTN24』・リンコン記者:「(アメリカ政府は)今回の訪問がもたらす“影響を留意”しているとしている。それでも、もし訪問が実現すれば、アメリカ政府の統一見解は“全面的に支持”となるでしょう。 中国軍と直接衝突することになろうとも、政府は(ペロシ氏を)支持するはず。中国政府は、ずっと台湾への武力行使もいとわないと主張してきた。中国が本当に武力衝突を望んでいるか否か、まもなくはっきりするでしょう」
◆中国総局の北里純一記者(北京から中継)
(Q.反発を強める中国ですが、どのような動きを見せているのでしょうか)
中国の王毅外相は2日夜、声明を発表しました。「台湾問題をめぐるアメリカの行為は裏切りであり、恥知らずだ。国の信頼をさらに貶めることになる」と批判しました。中国外務省も訪問が実行されれば報復措置を取ると会見で連日、強調しています。
また、中国軍も2隻の空母が、すでに港を離れたという報道が台湾側から出ています。沿岸部の街では、多数の装甲車両が道路や鉄道で移動する動画などもSNSで拡散しています。そして、2日夕方以降、中国の広い範囲で、多くの航空便がキャンセルされています。中国軍による対抗措置の準備に関連する可能性があるとみられます。
(Q.何らかの衝突は現実味を帯びているのでしょうか)
中国側としては、習近平国家主席が異例の3期目続投を目指す党大会を秋に控えて、いまのタイミングで、何とか社会を安定させたい。本音としては、事を荒立てたくないのです。ただ、ペロシ下院議長が台湾を訪問すれば、決して「座って見ているような真似はしない」とたんかを切っていますので、中国政府としては、引くに引けなくなっていて、不測の事態に発展する可能性があります。
◆大越健介キャスター(ニューヨークから中継)
(Q.アメリカ現地ではどうとらえられ、分析されているのでしょうか)
アメリカのメディアは、ペロシ下院議長の台湾訪問が、米中の緊張関係を一気に高める可能性があるとして、高い関心を持って伝えています。ペロシ議長は、これまで中国にとっては触れられたくない過去である天安門事件の現場を訪れたり、中国の民主派と面会するなど、対中強硬派の一人として知られています。
アメリカのアナリストは、今回、台湾を訪問するペロシ議長の目的として、中国が台湾に対する圧力を強めるなか、自分の目で、直接、今の状況を確認したいという意図があるのではないかと分析しています。
アメリカ政府は1日、ブリンケン国務長官が記者会見で明らかにしたように、今回は、あくまでペロシ議長の判断によるもので、アメリカ政府が直接関与したものではないこと。過去にも、政府とは別に議会幹部が台湾を訪問した例は少なくないことを挙げて、平静を呼び掛けていました。一方で、ペロシ議長の判断は尊重されるべきであり、中国側が過剰反応をし、危険な状況を生み出すとすれば、それは完全に中国側の責任だとして、釘を刺すことを忘れませんでした。実は、ペロシ議長の台湾訪問は、先週、行われたバイデン大統領と習近平国家主席との電話会談でも話題となり、習近平主席が強い懸念を示したとも伝えられています。そうしたなかで、あえて連邦議会の下院議長、日本で言えば衆議院議長というアメリカの要人中の要人が台湾を訪問することは、それが政府のお墨付きを得たものであるにせよ、そうでないにせよ、「アメリカは台湾に強く関与する」という中国に対する強烈なメッセージとなることだけは間違いなさそうです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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