円安で家族への仕送り“15%目減り” …苦境に立つ「日本で働く外国人」(2022年6月26日)

参院選でも争点となっている「円安」。
海外からの旅行者が割安な日本での買い物を楽しむ一方、
日本で働く外国人に円安が影を落としている実態が見えてきました

▽「円安で運がいい」食・買い物・名所を満喫
「午後4時すぎです。多くの荷物を持った乗せた外国人の方々が入国ゲートを通過していきます」
成田空港の到着ロビーに集まった人々…
「皆さん人数の確認をさせて下さい。Aグループの方いらっしゃいますか?ありがとう。Bグループの方?OK」
外国人観光客の受け入れが再開され、24日、香港から来日したツアーの一行。総勢15人が東京・長野・富山などを巡る「7泊8日の旅」です。
(ツアーガイド)「銀座は香港でいう所のセントラルのような場所です。ブランド品好きであれば、満足できる場所です。」
今回、親子3人で参加したこちらの家族。母フロレンスさんはこれまで10回以上日本を旅行しているといいます。3年ぶりの日本旅行の目的は…
(香港からの観光客 フロレンスさん)「娘たちは日本でのショッピングやグルメを楽しみにしています。(円安で)本当に運が良かったと思います。円は本当に安いです」
一行は初日の宿泊地、浅草に到着。荷物を置くと早速、街に…
(ツアー参加者 アリスさん)「(日本を)観光するのが楽しみです。」
(フロレンスさん)「全てが魅力的です。早くショッピングしたいです。」
コロナ対策としてツアーガイドに立ち寄り先を報告することを条件に自由行動となり、それぞれが思い思いの場所を散策します。家族が、まず向かったのは…
次女「お姉ちゃん、スヌーピーあるよ、ほら全部スヌーピーだよ」
長女「このスヌーピーかわいい!」
好きなキャラクターを求め大量に両替。ここで一家が驚いたのが値段です。
次女「300円だって」
母「日本円で300円?安すぎ。香港では1つ約850~1000円します。」
次はアクセサリー店へ…母親は娘へ、日本での買い物の心得を伝授します。
母「いいと思ったら、すぐ買った方がいいよ。チャンスを逃したら次は買えないよ」
「いいじゃない 買いなさいよ」
一家は今回、買い物代として現金80万円を用意、足りない分はカードで補うといいます。食事にもこだわりが…
母「長女は弁護士で高い物は香港で食べているので(日本では)食べ歩きの方がいいです。」
次女「回転ずしだ」
母 「食べないよ」
母 「前食べたけど美味しくなかったから」
そんな家族が食事に選んだ店はすき焼きの名店「今半」。一人前6600円の特上のすき焼きを注文、それでも香港で食べるより安いといいます。
母「うーん。美味しいです」
Q. 香港ですき焼きをランチで食べるといくらですか?
次女「平日は500香港ドル(約8500円)休日は600香港ドル(約1万円)です。夜は1000香港ドル(約1万7000円)です」
海外からの観光客に店は…
Q. 円安の影響は?
(「今半本店」店員)「仕入れに関しては随分苦しくなりましたけど、その分インバウンドで円安で入国されることを期待してます。」
午後9時すぎ、久々の日本を満喫した家族の初日は終了しました。

▽“100万円以上”両替も「円安なので」
ツアー2日目は、都会から一転、訪れたのは…埼玉県・長瀞岩畳。
母「いい場所ねぇ…」
ツアーガイド「これは“岩畳”といってマットレスを重ねたようになっています。幅は80~500mくらいありますよ。」
ツアーガイド「こっち見てください。笑って、1,2,3」
前日、すき焼きを堪能した3人家族が頬張るのは…香港では珍しいという“鮎の塩焼き”。
(シャロンさん)「これを炭火で焼いているおじさんを見て食べたくなりました。」
この日の最高気温は38度。暑い香港から来たツアー客ですが、さすがにこの猛暑は堪えます。ツアーは、この暑さを避けるかのように、“避暑地”の軽井沢へ…気温も一気に8度下がり、涼しく感じます。3人組のあの家族は、早速、土産物店に…
次女「ちょっと高いよね」。
母 「いくら?」
次女「5000円。」
母 「大丈夫だよ。欲しかったら買えばいいわ。」
気になったものは、もちろん、即お買い上げ…ペットの犬へのお土産だそうです。
長女「前回来た時と比べて、お得になった気がします。だから、欲しい物があったら、すぐに買います。」
母 「私も安くなったと思います。」
本格的な観光再開に、ツアーを企画した旅行会社は…
「円安なので、最も多いお客様で100万円以上を両替しました。観光が(全面的に)再開したら、爆買いが起きると思います。今後の行程が楽しみです。」
“円安”を謳歌する外国人観光客がいる一方…

▽“円安の苦境”母国の家族への仕送りが…
“円安”に苦しんでいるのは、日本で働く外国人です。
「お元気ですか?」
利用者「ハンさんがいるから楽しい」
「ありがとう」
介護施設で働くベトナムからの技能実習生・ハンさん。今、困っているのは…
(ベトナムからの技能実習生 ハンさん)「日本の物価が高くて、前は生活費はだいたい3万円くらいだったので、今は物価が高くて4万円になりました。」
大好きなベトナムのジュースも値上がりしました。
(ハンさん)「130円くらいだったのが今は150円になりました。前はわざわざいっぱいもう買って飲んだから、今ちょっと高くて
あまり買ってないです」
さらに“円安”で切実なのは、ベトナムへの送金です。
(ハンさん)「円安で今年1月から今までまだ送っていないです。もし送ったらちょっともったいないと思いますね」
毎月、10万円をベトナムの家族に送金していたハンさん。
(ハンさん)「10万円があったらパソコンとかバイクも買えます。生活費も10万円が多分3か月くらい使える」
ベトナムの3カ月の生活費になっていたという10万円。去年12月、10万円はおよそ2000万ベトナムドンでしたが、現在は、1700万ベトナムドンと15%目減りしました。
(ハンさん)「今、10万円で家族の生活費が2ヵ月くらい」
生活費3カ月分だった10万円が、2カ月分になったのです。
(ハンさん)「今は…困ってますよ…長い時間日本で働きたいけど今円安でベトナムに送るお金がちょっと少なくなったから(ベトナムに)帰るかなと思います。まだ決まっていないけど、今考えている…どっちがいいかなって…」
今や介護の現場で、欠かせないのが外国人の存在です。今年2月、この介護施設では、コロナ禍の入国制限で14人の外国人が、1年以上足止めされていました。
職員「日本語の勉強は続けていますか?」
(自国で待機する技能実習生)「はい、続けています。早く入国の手続きをしてほしいです。日本で仕事をしたい。皆さんと会いたいです。」
入国緩和で、ホッとしたのも束の間、今度は“円安”で新たな問題が出てきました。
(つばさグループ 天笠寛会長)「今まで求人をベトナムの方にお願いをすると、面接にあたる人たちが結構すぐに集まったのですが、実は今回ですねなかなかそれが集まりにくいというのが現状ですかね。日本に来て日本からの送金の額が変わってきているというのは非常に本人たちにとっては大きなことなのではないかと思います。」
こちらの介護施設では、従業員34人のうち6人が外国人です。
(つばさグループ 天笠寛会長)「海外の子たちが来て貰わないと、たぶん運営が出来なくなるではないかなという危機感を持っています。今後どうして行ったらいいのかなという不安感は山ほどありますね」

▽“日本から離れていく”海外の働き手
“不安”なのは、介護の現場だけではありません。20年に渡り、技能実習生の受け入れサポートを行っている団体の住野理事長は―
(協同組合企業交流センター 住野和久理事長)「介護、自動車の部品関係、食品関係、建設、コロナの前、おととしの2月くらいまでですと、10人募集するのに30人は楽に集まったんですよ。今は10人募集するのに20人集めるのが容易じゃないんですよ。足りない場合もある。」
その理由は…
(協同組合企業交流センター 住野和久理事長)「やはり円安ということで。去年に比べるともう20%くらいは安くなっていますよね。手取り前でいっても、おそらく年間180万円ぐらいありますから、それが2割減るんですから、大きいですよ。来るときに他の国と比較するわけですね。手近なところでいうと韓国、台湾です。」
“円安”の影響で、技能実習生が日本を選ばなくなってきているといいます。
(協同組合企業交流センター 住野和久理事長)「選ばれにくくなっていますね。円安で(給料が)下がってきた。日本はもっと給料上げなきゃだめですよ。国によっては、もう(技能実習生を)集められないという事態が来るかもしれない。他の国は(給料が)上がる、日本は相変わらず(給料が)横這いで“円安”も続いているということであれば、そうなる可能性もあると思います。」

6月26日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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