炭疽菌

炭疽菌, by Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki?curid=24770 / CC BY SA 3.0

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炭疽菌

炭疽菌(たんそきん、”Bacillus anthracis”)は、炭疽(症)の病原体となる細菌。病気の原因になることが証明された最初の細菌であり、また弱毒性の菌を用いる弱毒生菌ワクチンが初めて開発された、細菌学上重要な細菌である。第二次世界大戦以降、生物兵器として各国の軍事機関に研究され、2001年にはアメリカ炭疽菌事件で殺人に利用された。

炭疽菌 (“Bacillus anthracis”) は、バシラス属に分類されるグラム陽性の芽胞形成桿菌である。種小名の “anthracis” は「炭疽 (anthrax)」を意味する。この語はギリシャ語の「炭 ()」に由来し、炭疽の病変部が炭のような黒色に変色することにちなんで付けられた。

大きさは約 1 – 1.2 µm × 5 – 10 µm で、病原性細菌の中では最大の部類である。顕微鏡で観察すると、個々の桿菌は円柱状で、竹の節を直角に切り落としたように見え、これが直線上に配列した連鎖桿菌として観察される。その周囲を莢膜(きょうまく)と呼ばれる構造が取り囲んでいる。炭疽菌の莢膜は、他の細菌が持つものと比較すると境界が鮮明である。鞭毛や線毛は持たない。

炭疽菌は芽胞形成菌で、生育環境が悪化すると菌体の中央付近に卵円形の芽胞を形成する。芽胞は熱や化学物質などに対して非常に高い耐久性を持つ構造体であり、このため炭疽菌が生息している環境から菌を除去することは極めて難しい。第二次世界大戦中に英軍がグリナード島で行った実験では、少なくとも実験後40年以上にわたって、多数の炭疽菌が土壌に残存しつづけるということが判明した。

2002年以降、細菌の種の分類にはDNA-DNA分子交雑法を用いた遺伝学的な方法が採用されているが、この方式に従うと、炭疽菌 (“B. anthracis”) とセレウス菌 (“B. cereus”)、卒倒病菌 (“B. thuringiensis”) の3種の遺伝子はそれぞれ70%以上の相同性を持つため同一の生物種という扱いになる。しかしながら医学的な観点からは、この3者が混同されたときの危険性が大きいため、医学における重要性を考慮してそれぞれ別々の種として命名・分類されている(危険名と呼ばれる)。

炭疽菌は土壌に生息、あるいは芽胞の形で存在し、またヒツジなどの動物の体毛にも土壌由来の菌や芽胞が付着して存在しており、世界中で分離される普遍的な自然環境の常在細菌である。ただし、特に炭疽の発生が多い地帯は世界に2カ所存在しており、この地帯では炭疽菌の生息密度が特に高いと考えられている。一つは、スペイン中部からギリシャ、地中海を挟んでトルコ、イラン、パキスタンに至る地帯であり、特にトルコからパキスタンにかけては炭疽ベルトと呼ばれることがある。もう一つは、赤道アフリカ地帯である。また、ジンバブエでは1979年に記録的な炭疽の地域的流行が発生して以降、高度に炭疽菌汚染した地域になっていると言われている。

1000種類以上ある。

炭疽菌は土壌中の常在細菌であるが、家畜やヒトに感染して炭疽(症)を発症させる。そのもっとも多い例は、皮膚の傷口から侵入して皮膚で発症する皮膚炭疽である。この疾患は特に中世ヨーロッパでは、家畜の屠殺・解体・鞣革を行う者に多く見られた。また炭疽菌の芽胞が呼吸器を介して肺に到達すると、肺炭疽と呼ばれる極めて重篤な疾患を起こす。肺炭疽は羊毛を扱う者に見られた疾患である。また稀な例として、炭疽により死亡した動物の肉を食べたとき、腸管の傷口から侵入して起きる腸炭疽を起こす場合もある。いずれの場合もヒトからヒトへの伝染は起きない(言い換えれば、危険な感染症だが伝染病ではない)。炭疽は人獣共通感染症であり、日本では感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)において、四類感染症に指定されている。

グラム陽性桿菌であり、多くの抗生物質に感受性があり(抗生物質による治療が有効)、薬剤耐性を自然に獲得したものは稀であると言われる。治療には感受性のある抗生物質がもちいられる。

動物とヒトにおいて、それぞれ有効なワクチンが開発されている。動物に対しては弱毒生菌ワクチンが用いられる。これはパスツールが開発したものをヒントに、スターンが1930年代に作り出したものである(細菌学における歴史的位置付け、莢膜の節を参照)。一方、ヒトに対しては成分ワクチンが用いられており、これは外毒素の一つである防御抗原 (PA) を用いたもの…

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