ウクライナ善戦でロシア側に変化?4回目の停戦協議の行方は・・・専門家解説(2022年3月14日)

ロシアによる攻撃はウクライナの首都キエフ中心部へと迫っています。こうしたなか、4回目の停戦協議がオンラインで始まりました。

協議前には、ロシア代表団のスルツキー氏は「双方の立場に実質的な進展がみられる」と述べ、ウクライナ代表団トップのポドリャク氏もツイッターで「ロシアは今までに比べてウクライナ側の意見を聞こうとしている」と述べました。

一方、ポドリャク氏は、協議開始後にツイッターを更新し「双方、積極的に見解を示している。交渉は進んでいるが、状況は難しい」と述べています。

◆ウクライナ・ポーランド国境にいる、大越健介キャスターに聞きます。

(Q.ポーランドでは、停戦協議はどう受け止められていますか)

大越健介キャスター:「ポーランドでも、停戦協議について報道が行われています。ただ、これまで3回の協議で進展がなく、期待感が高まっているとは言えないと思います。ポーランドでは連日、ウクライナからたくさんの避難民が来ています。その現状を知っているだけに、肌感覚として、交渉が前に進むことに期待できないと感じるのも無理はないと思います」

◆ロシアの軍事・安全保障政策が専門の東大先端研専任講師・小泉悠さんに聞きます。

(Q.今回の交渉をどうみていますか)

小泉悠さん:「ロシアは今回の戦争を始めるにあたって、ウクライナ政府そのものを打倒することを目標に掲げているので、交渉で簡単に結果が出るはずがありません。ウクライナ側は、ロシアが侵攻してきたエリアはもちろん、クリミアやドンバスからも出ていけと言っています。お互いの初期設定のままだとなかなか話は通じません。今回の戦争がロシア側の圧倒的優勢で進んでいたら、ロシア側の言い分が通ってしまう可能性はありますが、ウクライナ軍は持ちこたえていて、ロシア側が『これまで通りの要求を投げているだけでは、話が全然進まない』と考え始めた可能性があります。それがポドリャク氏の『ウクライナ側の意見を聞こうとしている』という発言につながっている可能性があります。

しかし、現場で話がまとまったとしても、プーチン大統領がそれを承認するかは別の問題です。今回の戦争は、プーチン大統領の個人プロジェクトとして始まっていて、プーチン大統領は『何としてもやり抜く』『計画通りだ』と何度も言っています。交渉団同士の力関係と、モスクワの中での力関係がどのくらいかみ合うのかは懸念するところです」

(Q.ロシア側の雰囲気が変わってきたのは、首都キエフを包囲しきれていないことが影響していますか)

小泉悠さん:「あると思います。ロシア軍は、国境付近に展開している戦力も100%投入し、同盟国ベラルーシにも早く参戦してくれとせっついたり、シリアから民兵を集めているのではないかと言われています。手詰まりになりつつあり、交渉のパワーバランスに影響を及ぼしている気がします」

ロシア軍は、ウクライナ西部のリビウからさらに西、ポーランド国境に近いヤボリウにある、軍事基地に空爆を行いました。この基地は、NATO加盟国による軍事支援の拠点となっている基地で、ミサイル8発が着弾し、35人が死亡したということです。

(Q.ウクライナの西部にある軍事施設を攻撃したロシアの狙いは何ですか)

小泉悠さん:「西部は比較的、安全だとみられてきました。今の調子でいけば、ロシア軍はキエフやハリコフを陥落させることができるかもしれませんが、ゼレンスキー政権が西部に後退して抵抗を続ける見込みが立ちます。それに対して、ウクライナ全土が安全ではないと見せつけることが、交渉やウクライナの戦意をくじくうえでの重要な圧力になると思います。

もう一つは、NATOとつながりのある拠点をたたくことによって、西側に対して『これ以上、軍事援助をするんじゃない』と脅しをかけているようにみえます。今は勝てていますが、域外国の参戦を手控えさせるためのデモンストレーションを行ったのだと思います。ウクライナ側から見ても、NATOの軍事援助が期待できないとなれば、政治的な圧力になります」

(Q.南部のメリトポリでは市長が拉致され、ロシア側が新たな市長を就任させました。この動きをどうみますか)

小泉悠さん:「これがロシア流の占領・統治の方法だと思います。ロシアは国内でも、州知事が突然、殺人容疑をかけられて逮捕されるなど、政権に逆らえばこういったことが起きています。今回はましてや戦時下で占領された地域です。今回、市長が突然、拉致されて、何の民主主義的な手続きを経ないまま“新市長”が任命され、統治すると言い始めました。今後、ロシアが占領した地域で起きる1エピソードに過ぎないと思います。同じ南部のヘルソンでは、住民投票をやってドネツク・ルガンスクのようにヘルソン人民共和国を作る動きがあるのではないかと言われています。ロシアに降伏すれば平和な日常が戻ってくるのではなく、さらなる分断や非常に厳しい占領統治が続きます。そのため、ウクライナは簡単に降伏するわけにはいかず、なるべく粘って、受け入れられる交渉条件を勝ち取ろうとしているのが現状だと思います」

(Q.停戦交渉と侵攻に相関関係はありますか)

小泉悠さん:「車の両輪だと思います。戦場や占領地域でウクライナにとって受け入れがたい事態が広がっていけばいくほど、交渉が有利になります。ロシアが圧力と対話を両輪にしているのだとすると、ウクライナが粘っているため、圧力が完全に効いていません。今のままでは交渉条件を押し付けられないとなった場合、ロシアが何をするのか。生物兵器や科学兵器を使うのではないか、キエフに対して無差別攻撃を行うのではないか、もう降伏をした方がいいということを示すための限定的な核攻撃をするのではないか、色んなことが考えられます。ロシアが今後、どこまで事態をエスカレーションさせるのかが焦点になると思います。

今回、これだけの大戦争を始めてしまって、何の成果も得られないまま停戦、兵を退くことは、ロシア国内の政治上やりにくいと思います。プーチン大統領の政権基盤もゆらぎ、2024年の大統領選挙に向けて弱腰を見せられないのだとすると、何をやってくるかは懸念されるフェーズに入ってきていると思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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