米・ウクライナへ“戦闘機提供”を検討 さらに“亡命政府”案も 思惑は?専門家解説(2022年3月7日)

ロシアのウクライナ侵攻によって、NATOはかつてない程の結束を見せています。

それは、ウクライナへの武器支援という形でも変化が表れています。検討されているのは、ポーランドが持っている戦闘機の『MiG-29』をウクライナに提供するというもの。ただそうなると、ポーランドの防空能力が低下してしまうため、アメリカが、その穴を『F-16』で補填という案も出ています。

防空能力を強化しない限り、ロシアと戦い続けることはできません。
ウクライナ・クレバ外相:「私たちが最も必要としているのは、戦闘機、戦闘攻撃機、対空防衛システムであることは明らか。もし、空からの攻撃を防げなければ、地上でより多くの民間人の血が流れるでしょう」

ロシア側は、こうしたNATOの後方支援に敏感に反応しています。
ロシア国防省報道官:「ロシア攻撃のために軍用機をウクライナへ持ち込むことは、参戦したものとみなす」

ロシアとの戦いは、占領統治される可能性も排除できず、長期戦になるとの見方が強まっています。
そんななか、ゼレンスキー大統領など、首脳陣を国外に脱出させ、亡命政府を作り、駐留軍とのゲリラ戦を主導するという案が浮上しています。ただ、セレンスキー大統領は「迎えの車より弾薬をくれ」と徹底抗戦の意志を変えていません。

◆ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんに聞きます。

(Q.アメリカの狙いをどう分析しますか)
兵頭慎治さん:「今後、首都キエフをはじめ、ロシア軍の攻撃が激化する可能性があるので、軍用機の提供で優勢を勝ち取って、ロシア軍を撃退させる狙いがあると思います。ただ、ロシア側からは、それをやったら、ポーランドも参戦したことにみなすという話も出ているので、ポーランド側も慎重にならざるを得ません。そこにアメリカとNATO(北大西洋条約機構)の温度差も感じられると思います」

黒井文太郎さん:「軍用機の提供が実現すれば、ウクライナ側に有利に働くと思います。ただ、これまでに提供された携帯用の対戦車ミサイルと、戦闘機ではものの価値が違います。ロシア側は『NATOが戦闘に参加するのと同じではないか』と言っているので、これが実現すると、ロシアが報復してくる可能性があります。アメリカ側は、あくまで軍事援助で、NATOの参戦ではないと主張しますが、ロシアがどう評価するか。どちらかが退かないと、ロシア対NATOの戦闘になります。そこの駆け引きは先が読めません」

◆ワシントン支局・布施哲支局長に聞きます。

(Q.“亡命政府”の可能性はどれくらいあるのでしょうか)
布施哲支局長:「この計画、主に柱が2つあります。“西部のリビウに退避”する案、そして、それも無理な場合、隣国のポーランドに退避して“亡命政権を樹立”する案があります。この場合、ウクライナはポーランドからロシアへのゲリラ戦を指揮することになります。この案は、あくまでバックアップとして検討されている案で、実際に実行に移されるかどうかはわかりません。ゼレンスキー大統領は、再三にわたるアメリカ政府からの首都キエフからの退避の申し出を断っています。今後も、ゼレンスキー大統領がキエフを離れることはないだろうとみられています。これを踏まえて、ブリンケン国務長官もゼレンスキー大統領に何かあった場合は、ほかの閣僚が政権を引き継ぐ案があるということも言っています」

(Q.こういった案が出てきた背景には、何なのでしょうか)
布施哲支局長:「アメリカ政府は、ウクライナの抵抗を支えているのは、ゼレンスキー大統領のリーダーシップだと見ています。ゼレンスキー大統領は、過去、少なくとも3回、ロシアによる暗殺計画を生き延びています。ウクライナ政府の崩壊を防いで、抵抗を支えるのは、やはりゼレンスキー大統領の身柄の安全の確保。これがアメリカにとっても重要課題になります。もう一つ、亡命計画が浮上してきた背景にあるのは、アメリカが持っている情勢認識の厳しさがあると思います。アメリカ政府は、何とかしてウクライナ政府を支えようとして努力はしていますが、首都キエフの陥落は最終的に避けられないとみています」

◆改めて防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんに聞きます。

(Q.事態は長期化に向かっていますか)
黒井文太郎さん:「亡命政権の樹立は色んなことを検討しているなかの一つだと思いますが、首都キエフが陥落する可能性はかなり高いと思います。キエフが陥落して、ゼレンスキー政権が脱出した場合、西側の安全なエリアに新しい政権を作り、キエフではロシアが傀儡政権を作ることになると思います。ゼレンスキー政権が海外に出てしまうと、国内はロシアが抑えているというイメージになってしまうので、国内にとどまると思います」

(Q.プーチン大統領は目的を変えないと思いますか)
兵頭慎治さん:「市民を退避させるルートの確保、いわゆる“人道回廊”で住民を避難させた後、首都キエフの陥落、ゼレンスキー大統領の拘束、核疑惑を名目にした裁判にかけるというプーチン大統領のシナリオに大きな変更はないとみています。ポーランドに避難して亡命政権を作る案が、アメリカから出ているのは、キエフ陥落、ゼレンスキー大統領の身の危険性が高まっていることを示唆しているのだと思います。ロシア軍もこれ以上、長期化するとロシア国内でも反戦の動きがあるので、あるタイミングで総攻撃をかけるとみています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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