「プーチンは簡単にあきらめない」長期化は必至? 政府、防弾チョッキを準備【後藤部長のリアルポリティクス】(2022年3月4日)

ロシアのウクライナ侵攻から9日目。戦闘は今後もしばらく続くのか、日本にはどんな対応が求められるのか。TBS報道局の後藤俊広 政治部長に話を聞きます。(聞き手:豊田綾乃キャスター)

--2回目の停戦協議を終えた数時間後の出来事でしたが、ウクライナの原発が攻撃されました。ウクライナのクレバ外相は、ウクライナ南部によるザポロジエ原発が「ロシアにより全方位から砲撃を受けている」「すでに火災が発生している」などと明らかにしています。

発信の方法もいま風だと思いますが、外務大臣の個人のツイッターで発信されました。ザポロジエ原発というのはヨーロッパ最大級の原発です。ウクライナは原発の依存率が高い国です。この原発も国内中心にエネルギー供給を進めていますがロシア軍がなぜここに着目したか。国内のエネルギー供給を抑えることによってウクライナ国内の厭戦気分を掻き立てることによって戦闘を優位に進めたい。こうした思惑があると思うのですが。それにしても原発といいますとウクライナはいまから36年前になりますがチェルノブイリの大きな原発事故がありました。あの当時私は中学生だったんですが、日本にも放射能の雨が降ってくるということで身構えたということを記憶に残っています。その経験があるウクライナで戦闘行為の中で原発をターゲットにしたともみられる軍事行動が起こっているということは極めて危険だなと感じます。

--チェルノブイリのイメージがあったので、原発を攻撃するということはウクライナの人だけでなくて世界的に恐怖心をあおるような行為ではないか。

IAEAはじめ国際機関もかなりこの行為は危険視しています。ロシア側がこの後どう軍事アクションや表明をするかにもよるが危険な瀬戸際対策的な危うさを感じる。

--プーチン大統領は「どんな事があろうとも軍事作戦の目的を達成する」と。強い意志を感じるが。

今回の戦争は「プーチンリスク」「プーチンファクター」ということでプーチン大統領が主導で戦争が始まりました。プーチン大統領がどういった形で戦争を撤収させるか、決定がない限りはなかなか解決の見通しは立たないのではないかと思います。
日本政府がどのような見方をしているのか。ある政府関係者は「ロシアは現状、軍事情勢はうまくいっていない。けれどもプーチンはそんな簡単にはあきらめる人物ではない」と言っています。つまりこの状態が続くとすぐに平和裏に収まることではなく、一定程度長期化も視野に入れていかなければいけないということになるんだろうと思います。

--長期化という言葉が出ましたが、プーチンのウクライナへの要求、様々ありますよね。

プーチン大統領から見ればゼレンスキーさんへの個人的なしこりというのも当然あるのだろうと思いますし、あとはウクライナ国内の親ロシア派勢力地域の保護が当初の名目だった。プーチン大統領が最も危機感を持っているのはおそらくNATO(北大西洋条約機構)がどんどんロシアの周辺まで迫っていること。この四半世紀NATO加盟国は東欧地域にどんどん入っている。プーチン大統領としては隣国のウクライナまで加盟することによって、ロシアの西側の国境の大部分がNATO加盟国に接してしまう。プーチン大統領側、ロシアの国家安全保障からすれば極めてゆゆしきことだという危機感があったのは確か。この戦闘は確かにウクライナを舞台に行われているが、プーチン大統領としてはNATOがある程度ウクライナからの関与から一歩距離をもうけなさいということがプーチン側の要求になると思いますから、最終的にはアメリカなどのNATO主要国と折り合うかどうかというところまで行くと思う。そうなると交渉の過程を踏まえてももう少し時間がかかると思う。

--やはり長期化を視野に入れた対応というのが日本だけでなく各国にも重要となってきます。そんな中で日本ができること、どんな対応がとられようとしているのか。

岸田首相は3日、会見しました。これは“まん延防止措置”の延長など含めたトータルの意味での会見だったんですけれども、その中でもやはり国際貢献、ウクライナに対して国際貢献していくんだということを改めてアピールしました。
そして4日、おそらく日本としてはかなり頑張った対応だと思うんですけれども、自衛隊が持っている防衛装備品のうちですね、防弾チョッキですとか医薬品などをウクライナの方に支援物資という形で送ろうということの検討に乗り出しています。4日午後には岸田首相・岸防衛相などの政権幹部が集まった国家安全保障会議が開かれています。そこでの協議を踏まえて正式に決定するんじゃないかなと思うんですけれども、特に防弾チョッキはなかなか日本からすれば戦闘状態のところにそういったものを出すというのは、これまで例がなかったんです。もちろん日本もですね、昔は武器輸出三原則というのがありましたし、今はですね、防衛装備移転三原則というのがありますから、日本の防衛装備品というのはかなりどういった国・地域に送るかというのは厳格な規定があります。そういった中でギリギリできるものとして今政府側が考えているのが一つは防弾チョッキなんだと思います。
あるいは政権を支えている自民党の中では、防弾チョッキよりももっと何かすべきだというようなことを言う声もあるんですけれども、やはり日本はそういった法制度ありますから、法律の枠というのはちゃんと遵守した上で何ができるかというのをこれからも考えていく必要があるんじゃないかなと思います。

--長くなればなっていくほど、どんどんいろんな対応が求められてくるという可能性もありますよね。

そうですね。要するに長期化というのが一つのキーワードになってくると思います。3日の岸田首相の会見で一つの柱だったのは、国内対策では、やはりこのウクライナ情勢からガソリン価格がさらに高騰しています。何とかしなければいけないということで、岸田首相は、石油などの元売りに1リットル当たり最高で25円、これまでは5円の補助でしたから、一気に5倍に引き上げたんです。25円の引き上げというのを明言してるんですけれども、これもですね、当面の間ということを想定してるんです。ただ、おそらくウクライナ情勢が続く限りは原油高というのはしばらく続くと思います。そういった中でいきますと、長期化という可能性を踏まえた中で、日本として何ができるか。これは、もちろん国際貢献、ウクライナに対しての支援というのもそうですけれども、国内の一般の生活ですよね。そういったところでどういったケアをしていくのか。岸田首相にとっても厳しい日々がしばらく続くんじゃないかなと。
(04日19:00)

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