制裁強化で「ATMに行列」「反戦ムード」プーチン氏は追い詰められている?総力解説(2022年2月28日)

日本時間3月1日午前0時から、193カ国が加盟する国連総会で、緊急特別会合が開かれる予定です。

安全保障理事会の会合を求める決議案の採決では、ロシアの孤立が鮮明となりました。

緊急特別会合を求める採決では、反対はロシアのみ。中国、インド、アラブ首長国連邦は棄権し、賛成多数で開催が決まりました。安全保障理事会では、非難決議案がロシアの拒否権で否決。そのため、どの国も拒否権を持たない国連総会で、ロシア非難の決議案採択を目指します。

各国が連帯するロシア包囲網。アメリカと同盟諸国は、ロシアの一部銀行を、SWIFT=国際銀行間通信協会から排除することで合意しました。これにより、対象となる銀行は、世界の金融システムから締め出され、経済的に孤立することになります。

岸田総理は28日夜、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談を行いました。
岸田総理:「国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会と結束して、我が国としても毅然と行動していく。日本も参加した欧米諸国の共同声明にある取り組みとして、さらに国際社会におけるロシアへの金融制裁の実効性を高めるため、今般、ロシア中央銀行との取引を制限する制裁措置をとることを決定した」

また、3月1日午前1時過ぎ、アメリカのバイデン大統領が主催する加盟国による電話会談が開かれることも明らかにしました。

ロシア側は、制裁について、どのように受け止めているのでしょうか。

◆前田洋平モスクワ支局長の報告です。

プーチン大統領は、実は、あまり気にしていないのではないかといわれています。経済制裁の打撃を受けるのは、プーチン大統領の周り、支えている企業経営の幹部たちです。プーチン大統領は、こうした幹部に対して、「気にするな」と強い指示を出しています。取材したところ、プーチン大統領は、西側から切り離されてもやっていけると考えているかもしれないともいわれています。ロシアの一部メディアからは「プーチン大統領は完全に暴走している。周りも止められない状態になっている」との見方が出ています。

一方、国民の間では、じわじわと不安が広がってきていると思います。例えば、銀行のATMにも長蛇の列ができたり、私もレストランでクレジットカードが使えないといったことがありました。ロシア人も、もしかしたら西側の物が買えなくなるのではないか、かつてのソ連時代になるのではないかと、恐怖にも似た感情をリアルに感じていると思います。

◆ロシアの軍事・安全保障政策が専門の小泉悠さん、そして、ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.各国の制裁が、また一段と強くなりました。この制裁がプーチン大統領に与える影響はどの程度でしょうか)

兵頭慎治さん:ロシアをSWIFTから除外するということは、欧米諸国が連帯をするという意味では大きな一歩だと思います。ただ、SWIFT除外の中身、対象となる銀行がどういうところか、エネルギー取引が完全にできなくなるのかどうかなど、詳細を確認する必要があると思います。SWIFTからのロシア除外というのは、2014年、クリミア併合以降、指摘されていましたので、ロシアはそれに備えて、別の決済システムを整備しているところもあります。中長期的に経済にダメージを与えるのは、間違いないと思いますが、きょう、あす、プーチン大統領が軍事行動を抑止するというところまでは行きつかないと思います。

(Q.国連も対ロシアへの態度を強めています。これは、プーチン大統領を揺さぶりますか)
兵頭慎治さん:欧米諸国のみならず、国際社会全体がロシアの暴挙に対して批判するということが重要なので、そういう意味では、国連というのは重要な役割を占めていると思います。ただ、これもSWIFTからのロシア除外と同じで、現在進行形の軍事侵攻を止めるものには、残念ながらならないと思います。

(Q.これだけの“制裁”に対し、プーチン大統領とはいえ焦りなどは生まれないのでしょうか)
小泉悠さん:あるのかもしれませんが、今回のウクライナに対する全面侵攻に踏み切る時点で、わかっていたと思います。わかってやっているのだとすると、焦りはするかもしれませんが、止められない。簡単に止まると期待はするべきではないと思います。

(Q.プーチン大統領が“核の力”を公言し、ベラルーシも巻き込んでいます。その目的は、どこにあるのでしょうか)
兵頭慎治さん:「核を使用するかもしれない」と、プーチン大統領は最後のカードを見せている。私は、プーチン大統領にイラつきや、焦りはあるとみています。やはり核に言及するということは、いまの戦況からして、少し追い込まれている。あるいは、自分のシナリオ通りに展開していないという表れ。このままいくと核戦争になるかもしれないと見せることによって、ウクライナ軍の戦意を喪失させるとか、今後、欧米諸国が軍事支援することに対するけん制という動きもあるのではないかと思います。また、ベラルーシへの核の配備ですが、軍事的にベラルーシでなくてもいいのですが、これまでのアメリカとロシアとのやり取りで、自国領外に自国の核を置くということに対して、ロシアは反発してきました。アメリカは戦術核をヨーロッパに置いています。さらに、これは想像はしたくないのですが、例えば、中南米ベネズエラの大統領がSNSで、ロシアの軍事侵攻に賛同するような書き込みをしたという話もあります。かつてのキューバ危機のように、アメリカの裏庭にもロシアが核を配備するかもしれないというニュアンスを示していることで、アメリカも含めたNATOに対してけん制する形で、核のカードを切りつつあるように思えます。

小泉悠さん:これまでもプーチン大統領は、核の脅しをかけてきています。ただ、今回は経済制裁に対して、核をちらつかせると。これは見たことがありません。経済制裁をされたときに、ロシアが同じような経済報復ができるかというと、なかなかできないと思います。あとは、ガスの元栓を止めるという話になるかもしれませんが、これをやったらガス供給源としてのロシアの信頼は地に落ちます。そこで核の話。もちろん使うとは言っておらず、あくまでアラート体制を上げるということ。ウクライナの向こう側、西側に対するけん制が含んでいるとは思います。ロシアのインターファックス通信が、多数の爆撃機などを出撃させたというニュースが出てきましたから、核の特別警戒態勢というのが名前だけではないということをやるのではないかと非常に不安です。核のデモンストレーション的なことを考えているなら、ぜひ、やめてほしいと思います。

(Q.ロシア国内の不満・反発で、プーチン政権が崩壊する可能性はありますか)
兵頭慎治さん:ロシア国内でも反戦デモが拡大しています。SWIFTからのロシア除外などはロシア国民の経済に打撃を与えるので、反プーチンの動きが高まるのは間違いないと思います。現時点では政権打倒まではいきませんが、今後、ウクライナとの戦闘が泥沼化・長期化して、ロシア兵の被害が多く出てきた時には、今以上にプーチン政権への批判が高まる可能性があります。プーチン大統領は国民から投票で選ばれる立場にあるので、過度にプーチン批判が展開した場合、次の選挙に否定的な影響が及ぶ可能性があると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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